不当労働行為とは|禁止行為・罰則・使用者側の対処法を詳しく解説

監修者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

不当労働行為とは

不当労働行為とは

「不当労働行為(ふとうろうどうこうい)」とは、会社が労働組合とかかわりを持つ際に行ってはならない行為として、法律によってリストアップされた禁止事項のことです。

「労働組合」とは、労働者(従業員)をメンバーとして組織された団体のことです。

労働組合は、労働者の労働条件(給料や働く環境など)を維持改善したり向上させたりするために活動します。

労働組合に関する法的ルールは「労働組合法」という法律によって定められています。

労働組合法のルールのもとでは、使用者(会社)は、労働者(従業員)が労働組合に関して行う行為を不当に邪魔してはならないことになっています。

労働組合法の中に、会社が労働組合の活動を不当に邪魔するような行為が「不当労働行為」としてリストアップされており、会社がそのような行為を行うことが禁止されています。

不当労働行為と労働者の権利(労働三権)

労働者には、憲法で保障された3つの権利があります。

①団結権、②団体交渉権、③団体行動権の3つです。

団体行動権は、「争議権」あるいは「ストライキ権」と呼ばれることがあります。

 

団結権
労働者(従業員)が団結し、労働組合を作る権利のことです。
労働者が自由に労働組合に入る権利も含まれます。
団体交渉権
①の団結権によって作られた労働組合が、使用者(会社)を相手として、賃金(給料のこと)や労働条件などについて交渉することのできる権利です。
団体行動権

②の団体交渉の行き詰まりを打開するなどのために、労働者が団結してストライキなどの抗議行動を行うことのできる権利です。

これらの権利は憲法によって労働者に認められている権利ですから、基本的に、使用者(会社)は、労働者がこれらの権利に基づいて行動することを妨害してはいけません。

この記事で解説する不当労働行為とは、労働組合法によって、労働者のこれらの権利を使用者(会社)が邪魔する行為であると類型づけされているもののことです。

したがって、労働組合法のルールのもとでは、会社が不当労働行為を行うことは禁止されています。

また、万が一会社が不当労働行為を行った場合には、労働組合側が行政に対して助けを求めることができるよう「不当労働行為救済制度」が設けられているのです。

 

 

不当労働行為として禁止される行為とは

不当労働行為には、おおむね5種類の行為があります(労働契約法7条)(※1)。

会社が労働組合の活動に対してこれら5種類の行為のいずれかをすると、不当労働行為として法令違反になってしまいます。

不当労働行為には5種類

不当労働行為の5類型 労働組合法の条文
1 不利益取扱い・報復的不利益取扱い 7条1号(報復的不利益取扱いは7条4号)
2 黄犬契約 7条1号
3 団体交渉拒否 7条2号
4 支配介入 7条3号
5 経費援助 7条3号

下では、この5種類の不当労働行為を詳しく解説していきます。

※1 不当労働行為の種類わけにはいくつかの考え方がありますが、この記事では、説明のわかりやすさのため5種類にわける種類わけをしています。

(1) 不利益取扱い

不当労働行為の1種類目は「不利益取扱い」です。

「不利益取扱い(ふりえきとりあつかい)」とは、労働者(従業員)が労働組合のメンバーであること、労働組合に参加したこと、労働組合を作ろうとしたこと、労働組合の活動をしたことなどを理由に、使用者(会社)がその労働者に対して不利益になるような行為をすることをいいます。

労働者が労働組合に加盟したり、労働組合の一員として活動することは、労働者に認められた権利です。

しかし、労働者がそのような行動をしたときに、会社がそれを理由に労働者の給料を減らしたり、解雇したり、そのほか労働者の不利益になるようなことをすると、労働者が労働組合の活動をすることが難しくなってしまいます。

そこで、会社のそのような行為は「不利益取扱い」として禁止されているのです。

具体例

例えば、ある会社で労働組合がストライキをした場合に、会社がそのストライキに参加した労働組合のメンバーに対し、「ストライキに参加したから」という理由で解雇や減給にすると、「不利益取扱い」に該当する可能性があります。

会社がどのような場面でどのようなことをすると「不利益取扱い」になるのかについては、ユニオン・合同労組に強い弁護士がこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

 

「不利益取扱い」は、範囲の広い概念です。

上記の【具体例】のようなケースだけでなく、会社によるさまざまな行為が「不利益取扱い」に該当してしまう可能性があります。

例えば、会社が労働組合のメンバーに対して解雇や減給といった明らかに厳しい処分をした場合だけでなく、「配転(いわゆる配置転換)」をしたことが「不利益取扱い」になると判断した裁判例もあります。(詳しくはユニオン・合同労組に強い弁護士による次の解説をご覧ください。)

会社が労働組合に対する対応をとろうとするときは、会社の行為が「不利益取扱い」に該当しないよう慎重に行うことが必要です。

法令違反にならないように、労働組合対応に強い弁護士に事前にアドバイスをもらうこともよい方法です。

ワンポイントー報復的不利益取扱い

ここで解説しました「不利益取扱い」のほか、労働組合法の定める不当労働行為には「報復的不利益取扱い」というものもあります(労働組合法7条4号)。

「報復的不利益取扱い」とは、労働者が労働委員会に対して不当労働行為の救済申立ての手続をしたり、労働者が労働委員会で行った発言などを行ったりした場合に、使用者(会社)がそのことを理由として、労働者に対して不利益な取扱いをすることをいいます。(「不当労働行為の救済申立て」についてはこの記事の後半で解説いたします。)

「報復的不利益取扱い」は、通常の「不利益取扱い」と比べると、問題となる場面が異なっています。

ただし、禁止されている会社の行為は同じだといえます。

これらは、どちらも不当労働行為になります。

種類 問題となる場面 禁止される会社の行為
不利益取扱い
  • 労働者が労働組合のメンバーであること
  • 労働者が労働組合に参加したこと
  • 労働者が労働組合を作ろうとしたこと
  • 労働者が労働組合の活動をしたこと
  • など
労働者に対して解雇などの
不利益な取扱いをすること
報復的不利益取扱い
  • 労働者が労働委員会に対して不当労働行為の申立ての手続をした場合
  • 労働者が労働委員会で行った発言などを行った場合

など

(2) 黄犬契約

不当労働行為の2種類目は「黄犬契約」です。

「黄犬契約(おうけんけいやく・こうけんけいやく)」とは、使用者(会社)が労働者(従業員)を雇用するにあたって、労働者が労働組合に加入しないこと、または労働者が労働組合から脱退すること、という条件をつけることをいいます。

具体例

ある会社には労働組合があります。

この会社は、今年の新卒社員を採用するにあたって、「労働組合に加入してはならない」という条件を提示しました。

黄犬契約は不当労働行為に該当します。

したがって、会社が黄犬契約を行うと法令違反になります。

会社が実際に労働者と黄犬契約を締結した場合だけでなく、上記の【具体例】のように雇用にあたっての条件として提示しただけでも法令違反になりますので注意が必要です。

ユニオン・合同労組に強い弁護士が黄犬契約について詳しく説明していますので、次の記事もぜひご参照ください。

黄犬契約は、歴史的に、会社が労働組合への対応をとろうとするときの選択肢としてよく使われてきました。

つまり、黄犬契約は、会社にとって、労働組合への対処法として思いつきやすいものであるといえます。

しかし、現在の労働組合法では、黄犬契約が「不当労働行為」に該当することが特に明示的に定められていますので(労働組合法7条1号)、会社として労働組合に対応する際に黄犬契約を行わないよう注意が必要です。

 

 黄犬契約の由来は?

「黄犬契約」といっても、漢字を見ただけでは意味がよくわかりませんし、読み方もすぐにはわかりません。

「黄犬契約」はいったいどのような由来で生まれた言葉なのでしょうか。

じつは、「黄犬契約」は、アメリカの「yellow-dog contract」を日本語に直訳したものだといわれています(yellow-dog = 黄犬)。

1900年代初頭のアメリカでこのような契約が多く行われ、社会問題になったことがあるそうです。

英語を直訳したことによって生まれた名称ですので、「黄犬契約」という言葉そのものには特に日本語として意味がこめられているわけではありません。

(3) 団体交渉拒否

不当労働行為の3種類目は「団体交渉拒否」です。

「団体交渉拒否」とは、使用者(会社)が、労働者の代表者との団体交渉を正当な理由もなく拒否することをいいます。

「団体交渉」とは、労働者(従業員)が労働組合として団結し、労働条件(給料や労働環境など)の改善を求めて交渉することです。

よりシンプルにいえば、「団体交渉」とは、会社と労働組合との労働条件をめぐる交渉のことをいいます。

労働組合から会社に対して団体交渉の申し入れがあったときは、会社は、これに誠実に応じて団体交渉の席につかなければなりません。

正当な理由がないのに、労働組合からの団体交渉の申し入れを会社が拒否したときは、会社の行為は「団体交渉拒否」に該当し、不当労働行為として法令違反となります。

さらに、単に団体交渉を拒否する場合だけでなく、会社が団体交渉に対して不誠実に対応することも「団体交渉拒否」に該当することがあります。

団体交渉の申し入れは、社内の労働組合からだけでなく、社外の合同労働組合(いわゆるユニオン)から行われることもあります。

社外の合同労働組合からの団体交渉申し入れの場合も、会社が正当な理由なく団体交渉を拒否すれば、「団体交渉拒否」に該当します。

具体例

ある会社で、社内には労働組合はないが、従業員が社外の合同労働組合に加入しました。

そして、その合同労働組合から団体交渉の申し入れがありました。

会社がこの団体交渉を拒否したり、その他誠実な対応をとらなかったときは、「団体交渉拒否」に該当し、不当労働行為となることがあります。

ユニオン・合同労組に強い弁護士が団体交渉拒否について説明した記事がこちらにあります。ご参照ください。

 

正式な労働組合ではない労働者の集団から団体交渉の申し入れがあったらどうする!?拒否すると不当労働行為になる?

団体交渉は、会社と労働組合の間で行われるのが普通です。

労働組合から団体交渉の申し入れを受けた会社は、正当な理由がなければ団体交渉の席につくことを拒否できません。

では、正式な労働組合ではないけれど労働者が集まった集団やグループ(例えば任意に結成された「争議団」など)から団体交渉の申し入れを受けた場合に、会社がこれを拒否すると不当労働行為になるのでしょうか。

この疑問については、法律の条文では明確な定めがされておらず、この点について判断を下した裁判例もありません。

現在のところ、労働組合法という法律が正式な労働組合という組織を念頭においたルールであることから、労働組合法に基づく不当労働行為の制度を利用できるのは、正式な労働組合だけであるという考え方が有力です。

この点について、ユニオンや合同労組に関する法律問題に強い弁護士が詳しく検討した記事がありますので、ぜひご参照ください。

(4) 支配介入

不当労働行為の4種類目は「支配介入」です。

「支配介入(しはいかいにゅう)」とは、使用者(会社)が、労働者による労働組合の結成や運営を支配したり、これらに介入したりすることをいいます。

労働組合は、労働者が団結し、使用者(会社)を相手として、労働環境の改善や労働者の地位の向上を目指すものです。

もし会社が労働組合の結成や運営を支配したり、これらに介入したりすると、労働組合における労働者の自主性や団結力を弱めることになります。

そこで、会社によるこのような行為は「支配介入」として禁止されているのです。

 

具体例

  • 従業員たちが労働組合を作ろうとしているときに、会社が労働組合に入ろうとする従業員たちをあからさまに批判した
  • 従業員たちが労働組合を作ろうとしているときに、会社が先に従業員親睦団体を作ることで、労働組合の結成を邪魔した
  • 会社が労働組合の幹部を配転したり、買収するなどした
  • 労働組合の役員選挙などに会社が介入した

「支配介入」は、とても範囲の広い概念です。上記に示しました【具体例】だけでなく、会社のさまざまな行為が「支配介入」に該当する可能性があります。

会社のどのような行為が「支配介入」に該当するかについて、弁護士が裁判例をまじえて解説した記事がありますので、ぜひご覧になってください。

また、支配介入に該当する可能性のある具体的なケースとして、弁護士による次のような解説記事もあります。

会社として「こういう対応をすると支配介入に該当するのかな?」と疑問が生じたときは、労働組合に関する法律問題に詳しい弁護士にアドバイスを受けるのもよいでしょう。

(5) 経費援助

不当労働行為の5種類目は「経費援助」です。

「経費援助」とは、使用者(会社)が、労働組合の運営に必要な経費を援助することをいいます。

労働組合は、労働者が団結し、使用者(会社)を相手として、労働環境の改善や労働者の地位の向上を目指すものですから、会社の影響力を受けることなく独立している必要があります。

もし会社が労働組合の運営に必要な経費を援助していると、労働組合は会社に対して率直に意見をいいにくくなってしまいます。

そこで、会社から労働組合に対する経費の援助も不当労働行為として禁止されているのです。

具体例 

  • 労働組合の専従者の給料を会社が負担している
  • 従業員が労働組合のための用事で出張するのに会社が出張費を負担している

ただし、形式的に「経費援助」に該当するように見えるケースでも、労働組合の自主性・独立性に影響しないほど軽いものであれば、不当労働行為にならないこともあります。

会社としてもし判断に困ったときは、労働組合に関する法律問題に強い弁護士に相談するのもよいでしょう。

 

 

実際の不当労働行為の判断は?

上記のとおり5種類の不当労働行為をご紹介しました。

ただし、実際に会社の行為が不当労働行為に該当するか否かの判断をする場面では、会社の行為がどれかひとつの不当労働行為にぴたりとあてはまることはあまりありません。

ひとつの会社の行為が、不当労働行為の複数の種類にあてはまることもよくあります。

例えば、会社が人事査定をする場合に、労働組合に加入している従業員の人事査定を一律に低く評価した場合、会社の行為は、「不利益取扱い」と「支配介入」の両方に同時に該当する可能性があります。

会社が不当労働行為を避けるためには、複眼的な検討が必要です。

 

 

不当労働行為の「救済申立て」って何だろう?不当労働行為救済制度とは?

労働組合法のルールの中には、会社が不当労働行為をしてしまった場合、労働組合が行政に対して助けを求めることのできる制度が組み込まれています。

この制度のことを「不当労働行為救済制度(ふとうろうどうこういきゅうさいせいど)」といいます。

不当労働行為救済制度の概要ー労働組合による「救済申立て」

労働組合や労働組合のメンバーが、「会社が不当労働行為をした」と思ったときは、各都道府県の「労働委員会」に対して「救済申立て」をすることができます。

この制度は、厳密にいえば法的には裁判ではありませんが、あくまでイメージとしては裁判に近い形のものです。

裁判と不当労働行為救済制度の違いをまとめました。

制度 担当する官公庁 誰が始めるか 相手方は誰か 手続のはじめかた 何を求めるか 終わり方
裁判 裁判所 原告 被告 原告が裁判所に
訴状を提出
法律の適用による
紛争解決
判決
不当労働行為
救済制度
労働委員会 労働組合 使用者(会社) 労働組合が労働委員会に
「救済申立て」をする
不当労働行為
からの救済
命令(救済命令
か棄却命令)

 

労働組合や労働組合のメンバーが「救済申立て」をしたときは、労働委員会は、労働者(労働組合)と使用者(会社)の双方から言い分をきいて必要な書類などを調査したうえで、審問を開きます。

審問とは、公開の場所で証人尋問などを実施することです。

審問が終わると、労働委員会は、救済申立てに対して「救済命令」か「棄却命令」のどちらかを出します。

これらの命令は、裁判でいう「判決」のようなイメージです。

「救済命令」は労働組合側が勝った場合(労働組合側が一部分だけ勝った場合も含みます。)に出されるもので、「棄却命令」は会社側が勝った場合に出されます。

審理の途中で労働組合側と使用者側で話し合いによる和解が成立し、救済命令や棄却命令が出されることなく終了することもあります。

詳しくは、この記事の後半で解説いたします。

 労働委員会とは?

「労働委員会」とは、都道府県ごとに設置されている行政組織です。たとえば、東京都労働委員会とか大阪府労働委員会のように、都道府県ごとに労働委員会が設置されています。
(なお、国(政府)にも中央労働委員会という全国を統括する労働委員会が設置されています。)

労働委員会は、①労働者委員、②公益委員、③使用者委員、という3種類の委員で構成されています。

①の労働者委員は、労働組合の役員など労働者を代表する立場の人たちです。

②の公益委員とは、大学教員や弁護士など公益(社会全体の利益のことです)を代表する立場の人たちです。

③の使用者委員とは、会社経営者や業界団体など 使用者を代表する立場の人たちです。

労働委員会は、このような3種類の委員によって、公平な審理・判断がなされるよう工夫されています。

労働組合だけが「救済申立て」をすることができる!

以上のように、労働組合(あるいは労働組合に入っている労働者)は、会社から不当労働行為をされたと思ったときは、労働委員会に対して「救済申立て」をすることによって、労働委員会による問題の解決を求めることができます。

これが「不当労働行為救済制度」です。

このような不当労働行為救済制度を使うことができるのは、正式な労働組合(または労働組合のメンバーになっている労働者)だけとされています。

正式に労働組合になっていない労働者の集団(例えば労働者たちが結成したグループや争議団など)は、不当労働行為救済制度を使うことはできません。

合同労働組合(いわゆるユニオン)による救済申立てもありうる!

合同労働組合(ユニオン)とは?

自社に労働組合がない場合でも、労働者(従業員)は、社外の合同労働組合(いわゆるユニオン)に加入することができます。

合同労働組合とは、さまざまな会社(おもに労働組合がない中小企業)の従業員が個人で加入できる労働組合です。

合同労働組合は、会社単位で結成される労働組合ではなく、地域ごとに結成される労働組合となっています。

合同労働組合については、合同労組・ユニオンに強い弁護士による解説も用意しています。ぜひ参考になさってください。

合同労働組合(ユニオン)による救済申立て

合同労働組合も正式に組織された労働組合ですから、不当労働行為救済制度を利用して、労働委員会に対し「救済申立て」を行うことができます。

つまり、自社に労働組合がない場合でも、会社が合同労働組合に対して不当労働行為と疑われる行為をしたときは、合同労働組合が会社に対して「救済申立て」をすることが可能なのです。

会社としては、自社に労働組合がなくても、合同労働組合に対して不当労働行為をしないよう注意しなければなりません。

 

 

労働組合から不当労働行為の救済申立てがされた!今後の流れと対処法は?

手続の流れ

労働組合が会社に対して不当労働行為の救済申立てをしたときは、次のような流れで手続きが進みます。

申立て

  • 労働組合が不当労働行為の救済申立て
  • 申立ては都道府県の労働委員会に提出
  • 労働組合側は「会社が不当労働行為をしたので助けてください」と主張する

労働委員会から会社に書類が届く

調査

  • 会社は自社の主張(不当労働行為をしていないという主張)や証拠を提出する
  • 労働委員会が双方の主張をきいて証拠を調べる

審問

  • 公開の「審問廷」という場所で行われる
  • 会社側と労働組合側がどちらも出席する
  • 証人尋問や当事者本人への尋問

和解

労働組合側と会社側が和解して終了

合議

  • 労働委員会が結論をどうするかを話し合う
  • 合議の内容は非公開

命令

  • 労働委員会が結論を「命令」という形で出す
  • 労働組合の主張に理由がある(=労働組合側の勝ち)なら「救済命令」
  • 労働組合の主張に理由がない(=会社の勝ち)なら「棄却命令」

審査申立て

  • 命令に不満のある当事者は中央労働委員会(都道府県ではなく国の労働委員会)に「審査申立て」ができる
  • 中央委員会がもういちど調査・審問・合議をして命令を出す

取消訴訟

  • 審査申立ての命令に不満のある当事者は裁判所に命令の取消しを求めて訴訟を起こすことができる
  • 裁判所が命令の妥当性を判断する

ユニオンや合同労働組合に関する法律問題に詳しい弁護士が不当労働行為の救済申立ての流れを詳しく解説した記事がこちらです。ぜひご参考になさってください。

労働委員会が出す救済命令ってどんなもの?

労働組合側から不当労働行為の救済申立てがされ、労働委員会による一連の手続きが行われると、労働委員会は「救済命令」か「棄却命令」のどちらかを出します。

不当労働行為の救済制度は、厳密には裁判ではありませんが、イメージとしては裁判に似た形で進められます。「救済命令」や「棄却命令」は、裁判でいうところの「判決」のような位置づけになります。

労働組合側の主張が全面的に認められた場合、または一部だけ認められた場合は「救済命令」が出されます。

労働組合側の主張が全面的に認められなかった場合には「棄却命令」になります。

労働組合側は、「会社が不当労働行為をしたので助けてください(救済してください)」と主張して救済申立てをします。

したがって、労働委員会が「救済命令」を出すのは、一般に、「会社が不当労働行為をした」と労働委員会が認めた場合になります。

したがって、「救済命令」は、会社に対して「不当労働行為をやめなさい」とか「不当労働行為が行われる前の状況に戻しなさい」という内容になるのが一般的です。

救済命令について、ユニオンや合同労組に強みを持つ弁護士がまとめた記事もあります。ぜひご一読ください。

会社に救済申立書が届いたときの初動対応ー会社は何をすればいい?

会社が労働組合から不当労働行為の救済申立てをされたときは、労働委員会から会社に対して、労働組合側が提出した申立書が郵送されてきます。

この書類が届くことで、会社は、不当労働行為の救済申立てがされたことを知ることになります。

送られてくる申立書には、労働組合側の主張が書かれています。

会社は、これに反論するため、自分の主張を「答弁書」という書類にまとめて労働委員会に提出しなければなりません。

初動対応について、ユニオンや合同労働組合に関する法律問題に強みを持つ弁護士が詳しくまとめた記事はこちらです。

会社が答弁書や証拠を提出したら、手続きは上記のチャートのように調査→審問→合議→命令と進んでいきます。

答弁書の作成や証拠の提出、審問への出席対応などは、高度な法律知識を必要とすることがあります。

会社だけで対応することに不安があるときは、労働問題に強い弁護士に依頼することをお勧めします。

 

 

不当労働行為により使用者が受ける罰則

会社が不当労働行為をしてしまった場合、罰則はあるのでしょうか。

じつは、会社が不当労働行為をした場合でも、会社やその代表者が刑事罰(罰金や懲役など、犯罪に対する処罰)を受けることはありません。

したがって、不当労働行為をした会社の代表者に前科がつくこともないといえます。

ただし、上記のとおり、労働組合(社内の労働組合だけでなく社外の合同労働組合なども)によって救済申立てがされることがありますし、その結果、救済命令(労働組合側の主張を認める命令)が出されて確定したときには、会社はその命令にしたがわなければなりません。

したがって、刑事罰がないからといって不当労働行為を甘く見るのは、企業としては厳禁です。

労働組合に対する対応をするにあたっては、不当労働行為にならないように普段から注意して行動することが必要です。

 

 

不当労働行為に関する命令や判例を調べる方法は?

過去に労働委員会や裁判所で不当労働行為に関するどんな命令・判決が出されているかは、厚生労働省のウェブサイトにある「中央労働委員会命令・裁判例データベース」で調べることができます。

無料で利用できますので、気になる事例があればデータベースを利用してみるとよいでしょう。

 

 

 

 

まとめ

不当労働行為には5種類

  • 「不当労働行為」とは、会社が労働者の労働組合に関する行為を邪魔するものとして、労働組合法で禁止された行為
  • 「不当労働行為」には5種類がある。
    ①不利益取扱い、②黄犬契約、③団体交渉拒否、④支配介入、⑤経費援助
  • 自社に労働組合がない場合でも、従業員は社外の合同労働組合に参加することができる。
    この場合には合同労働組合からの団体交渉の申し入れや救済申立てがあり得る。
  • 不当労働行為の救済制度とは、労働組合が労働委員会に対して「会社が不当労働行為をしたから助けてください」と主張して申し立てるもの。
  • 不当労働行為の救済申立てがなされたときは、労働委員会で裁判に似た手続きが進められる。
  • 不当労働行為の救済申立てがなされたときは、会社は答弁書の提出や審問への出席などの対応が必要。
  • 救済申立てへの対応は高度な法的判断が必要なことも。
  • 労働組合やユニオンの事例に強い弁護士への依頼を検討。
  • 救済申立ては、最後に「救済命令」か「棄却命令」が出される。
  • 「救済命令」は労働委員会が「会社が不当労働行為をした」と認めた判断。
  • 会社に対して不当労働行為の是正が求められる。
  • 「棄却命令」は労働委員会が「会社は不当労働行為をしていない」と認めた判断。
  • 不当労働行為には刑事罰はない。
    しかし、会社にとってデメリットが大きいので、普段から不当労働行為をしないように注意を。
    困ったときには労働組合やユニオンの事例に強い弁護士のアドバイスを。

以上、不当労働行為についてまとめました。

この記事が企業のみなさまのお役に立つことを願っております。

 

 





不当労働行為についてのよくあるQ&A

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