労働委員会へ不当労働行為の救済申立をされたらどうなりますか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

質問マーク労働組合(ユニオン)から労働委員会に不当労働行為の救済申立てがなされました。

今後どのような手続になっていくのでしょうか?

手続のイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士竹下龍之介イラスト審査手続としては、調査、審問、合議、命令の順に進行していきます。

 

 

解説

不当労働行為の救済申立て制度

解説する弁護士のイラスト不当労働行為(くわしくはこちら「不当労働行為とは」をごらんください。)に対しては、労組法20条により労働委員会に審査権限が与えられています。

そして、労組法27条以下に救済申立てに関する規定が置かれています。

 

具体的な手続の流れ

申立て

解説する弁護士のイラスト「救済申立て」という名のとおり、この手続は不当労働行為を受けたとされる労働組合が労働委員会に申し立てることによって開始されます。

申立先は、労働者もしくは使用者の住所、労働組合の主たる事務所の所在地、または不当労働行為の行為地にある都道府県労働委員会です(労組施令27条1項)。

救済申立ては原則として二審制とされており、都道府県労委での審理が第一審、中労委が再審の機能を果たしています。例外的に、中労委自身が全国的に重要な事件と認めた場合は第一審として審理することができるとされていますが(労組施令27条5項)、実務上はほとんどありません。

申立ては基本的に書面によって行われます。申立書には、申立人、被申立人(相手方)の氏名、住所や不当労働行為を構成する具体的事実、請求する救済の内容を記載しなければなりません(労委規則32条2項)。

矢印のマーク

調査

解説する弁護士のイラスト申立てを受けた労働委員会は、遅滞なく調査を行い、必要があると認めたときは、当該申立てが理由があるかどうかについて審問を行わなければならないとされています(労組法27条1項)。

したがって、労働組合から不当労働行為の救済申立てがなされると、相手方である使用者に対して申立書が送付され、調査手続に入ります。

具体的には、申立書の送付を受けた使用者は、当該申立書に対して答弁書という書面と自らの主張を裏づける証拠の提出をする必要があります(労委規則41条の2第1項)。この点は裁判手続と基本的に同じです。

もっとも、答弁書は原則として申立書の送付を受けたときから10日以内に提出しなければならないとされており(労委規則41条の2第2項)、裁判手続以上に日程はタイトです(具体的な対応についてはQ&A「ユニオンからの救済申立書が届いたらどうすればいいですか?」をご覧ください。)。

その後、調査期日が開かれ、互いの主張や証拠の整理を行っていき、審理計画を策定します。審理計画の策定は、審理の迅速化と効率化のために2004年の労組法改正により導入されました。そこでは、①調査において整理された争点及び証拠、②審問の期間、回数、証人の数、③命令交付の予定時期を定めることになります(労組法27条の6第2項)。

また、調査手続の中で書証については、証拠調べが行われます(労組法27条の7)

 

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審問

解説する弁護士のイラスト調査手続が終了したのち、定められた計画に従って審問が行われます。

審問手続は公開されており、当事者である労使双方が手続に参加し、公益委員のみならず、労使の委員も参加して行われます。審問では調査期日では行うことができない証人尋問や当事者本人への尋問がなされます(証人尋問についてはQ&A「労働委員会の審問の証人尋問はどのように行われますか?」)をご覧ください。)。

なお、例外的に審問を行わないで命令を発することも可能とされています(労委規則43条3項)。これは調査手続により、労使双方の主張書面や書証、期日における陳述により争点整理や書証の取調べが行われたことで容易に事実を認定することができる場合を念頭に置いています。

 

矢印のマーク

合議

解説する弁護士のイラスト審問手続が終了したのちは、労働委員会は命令を出すために合議を行います。合議では、事実認定と認定した事実への労組法7条の当てはめ、最終的な命令の内容を議論します。この合議手続は非公開とされています(労委規則42条3項)。

合議に関して、労働委員会で事実認定をするために、どの程度の証明が必要かについてですが、労働委員会の命令が行政処分として取消訴訟の対象となっていることなどから、一応確からしいというレベルの「疎明」では足りず、裁判所の判決の際に要求されるのと同様に、「証明」されなければならないというのが通説的な考え方です(菅野1066頁)。

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命令

解説する弁護士のイラスト合議終了後、労働者や労働組合からの申立ての全部又は一部に理由があると判断する場合には救済命令を、理由がないと判断する場合には申立てを棄却する命令を発することになります。

命令は書面によりなされます(労組法27条の12第3項)。命令書には、命令書である旨のほか、当事者、主文とその理由、命令日、判断した委員会及びその委員名が記載されます。当事者には命令書の写しが交付されることになります。

なお、救済申立てから命令までの平均審理期間は1年半以上を要している状況であり(東京都労働委員会の平成20年1月1日から平成27年12月31日までの統計資料をご参照ください)、和解ではなく命令手続に及ぶ事案では、長期間にわたって対応を余儀なくされてしまいます。

したがって、使用者としては、できるだけ無用な救済申立てを受けないように労働組合との団体交渉に適切に対応すること、申し立てられた場合でも和解を検討するなどして早期解決の手段を常に意識しておくことが重要です。


 





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