ユニオンは不当労働行為にどう立ち向かってきますか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

質問マーク労働組合(ユニオン)が不当労働行為に対し何らかの手段をとる場合、どのようなものが考えられますか?

使用者のイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士西村裕一イラスト不当労働行為に対する救済方法としては、①裁判や労働審判といった裁判所による司法救済と②労働委員会を中心とする行政救済が考えられます。

 

 

解説

不当労働行為の効果

労組法7条に規定する不当労働行為(くわしくはこちら「不当労働行為とは」をごらんください。)の私法上の効力については、実務上無効になるという考え方がとられています(菅野993頁、西谷206頁)。

裁判例においても、不利益取扱(労組7条1号)に違反する解雇は当然に無効であると判断しています(医療法人新光会事件(最三小判昭和43.4.9民集22巻4号845頁)、詳細はこちら「裁判で解雇が不当労働行為とされた場合、どう対応したらいいですか?」をご覧ください)。

解雇のイメージイラストつまり、不当労働行為の禁止を規定している労組法7条には強行法規としての効果が認められます。

この不当労働行為に対する効果からすれば、不当労働行為がなされたと主張する労働組合や組合員は、裁判所に対して救済を求めることができます。

これが司法救済です。

 

司法救済

司法救済と一言でいっても具体的にどのような救済方法がとられるのかは、不当労働行為の類型によって変わってきます。

例えば、先ほどのように不利益取扱として組合員が解雇された場合には、従業員の地位を確認するという地位確認請求や賃金支払請求の裁判を提起することになります。もちろん、仮処分も申立てが可能です。

裁判所のイメージ画像また、組合員であることを理由に人事考課が低い査定となり、低い賃金しか支払われていない場合には、本来あるべき人事考課に基づく賃金との差額請求という救済方法が考えられます。

他方、支配介入の不当労働行為(労組法7条3号)に対しては、損害賠償請求という形で救済が図られます。法的根拠としては不法行為(民放709条)が挙げられます。同じく正当な理由なく団体交渉に応じないという誠実義務違反(労組法7条2号)についても、支配介入と同様に損害賠償請求が可能です。

なお、近年は司法救済の手段として、通常の裁判手続以外に労働審判も多く申し立てられています(平成27年の全国の新受件数は3389件で通常裁判の3679件とほぼ同数となっています。)。

裁判のイメージイラスト労働審判とは、職業裁判官である労働審判官1名と労働関係に関する専門的な知識と経験を有する労働審判員2名で組織される労働審判委員会が労使双方の主張を聞いて、調停により紛争解決を図れないかを試みる手続です。労働審判員の2名は、労使双方の立場から1名ずつ選出されます(労働者側の労働委員だからといって常に労働者の味方をするわけではなく、むしろ、労働者に対して消極的な対応をとるケースもあります。また、同じく使用者側の労働委員だからといって、使用者の味方をするわけではありません。)。

この手続は裁判と異なり、原則として3回以内の期日で審理を行い、調停による解決に至らない場合には、労働審判委員会が労働審判を行うことで手続を終了します。

この労働審判は、一定の期間(審判書の送達又は審判の告知を受けた日から2週間)に異議の申立てがなければ裁判上の和解と同一の効力が認められています(労審法21条1項、4項)。異議申立てがなされると、通常の裁判手続に移行し、労働審判は効力を失います(同3項)。

カレンダーのイラストまた、労働審判の特徴として、原則として申立てを受けてから40日以内に第1回目の審判期日を開かなければならないことになっているため(労審規則13条)、申立てを受ける側(相手方)に立つことの多い、使用者側は労働審判に向けた準備期間が非常に短く、タイトなスケジュールの中で主張を尽くさなければならないという難しさもあります。

 

行政救済

不当労働行為に対しては、個別的解決手段としての性質を有する司法救済に加え、労働委員会による行政救済も可能となっています。

具体的には、不当労働行為を受けたと主張する労働組合は、労働委員会に対して、その救済を申し立てるということが行えます。

この場合、裁判所による司法救済と異なり、個別の権利義務関係についての確定的な判断を行うだけでなく、団結権等の労働三権の侵害を排除するために、広い裁量が認められています。

格差のイメージイラスト例えば、賃金差別の事例では、裁判所の司法救済ではあくまで過去の賃金差額に対する支払を命じることしかできないですが、労働委員会では将来の部分に対する支払も含めて企業に対して是正を命令することができます。しかも、労働委員会の命令に従わない場合には、刑罰や過料の制裁まで科されています。

 

 





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