黄犬契約とは?弁護士がわかりやすく解説

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

黄犬契約(おうけんけいやく)とは、会社が従業員を雇う際に、その従業員が労働組合に加入しないこと、あるいは、労働組合から脱退することを雇用条件とする契約のことです。

このような契約は労働組合法上の「不当労働行為」として禁止されています。

会社の中には従業員が労働組合に加入して組合活動を行うことにネガティブなところもあります。

しかし、このような契約は従業員の労働組合に加入する権利等を制限することとなります。

ここでは、黄犬契約の意味や労働組合法の規制内容について、労働問題に詳しい弁護士が解説します。

 

黄犬契約とは

黄犬契約(おうけんけいやく)とは、会社が従業員を雇う際に、その従業員が労働組合に加入しないこと、あるいは、労働組合から脱退することを雇用条件とすることです。

黄犬契約は、労働組合への不加入・脱退を強制することとなり直接的に団結権を侵害することになりますから、労働組合法においても、不利益取扱の不当労働行為とあわせて、「労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること」(7条1号)を不当労働行為として禁止しています。

引用元:労働組合法 | e-Gov法令検索

 

黄犬契約の由来

黄犬契約は、英語の yellow dog contract に由来しています。yellow dogには「卑劣なやつ」という意味があります。

1920年代にアメリカにおいて、会社が労働組合の争議活動を弾圧するために、労働者が労働組合に加入しないことや労働組合から脱退することを雇用条件とする方法を多く用いました。この条件に応じる従業員のことを「yellow dog」と呼んだことから、黄犬契約という名称となっています。

 

 

黄犬契約に例外はある?

ユニオンショップとは

ユニオンショップとは、会社が労働協約において、自己の雇用する従業員のうち当該労働組合に加入していない者及び当該組合の組合員でなくなった者を解雇する義務を負う制度です。

ユニオンショップは、従業員の組合への加入や脱退の自由を制限する点で、黄犬契約と同じように見えます。

しかし、ユニオンショップは黄犬契約の例外として、認められています。

すなわち、労働組合は、使用者との団体交渉を有利に進めるために、組織を拡大し、より有利な労働条件を獲得することを目的とする団体です。

黄犬契約は、労働組合の力を弱めるものです。

他方で、ユニオンショップは、特定の労働組合への加入を促す協定であり、労働組合の力を強める性質を持ちます。

したがって、労働組合の保護に資するものといえます。

労働組合法においても、黄犬契約の例外として、特定の労働組合が特定の工場事業場における過半数の労働者を代表している場合に、労働者がその労働組合の組合員であることを労働条件とする労働協約の締結は妨げられないと規定されています(7条1号但書)。

根拠条文
(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。(以下省略)

参考:労働組合法 | e-Gov法令検索

通説では、労働組合法7条1号但書の解釈として、ユニオン・ショップ協定の効力を認めつつ、その要件として過半数代表組合であることを明らかにした規定であると考えられています。

 

では、ユニオン・ショップ協定の下、当該労働組合に加入していた者が、労働組合を脱退し、他の労働組合に加入した場合、ユニオン・ショップ協定を理由に解雇することができるでしょうか。

判例 参考判例:最一小判平元12.14民集43巻12号2051頁

この点について、最高裁は、ユニオン・ショップ協定によって労働者の組合選択の自由及び労働者の団結権を侵害することは許されないとした上で、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者については使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条の規定により無効であると判示しています。

参考:最高裁判所ウェブサイト

したがって、ユニオン・ショップ協定の下、当該労働組合に加入していた者が、労働組合を脱退したとしても、他の組合に加入したような場合には、解雇することはできません。

なお、ユニオン・ショップ協定に基づき解雇する場合であっても、解雇権濫用法理(労契法16条)は適用されます。

 

黄犬契約とユニオンショップの違いのまとめ

黄犬契約とユニオンショップは両者とも雇用の条件に関する契約です。

しかし、黄犬契約は労働組合へ加入したり、または脱退しないと解雇されてしまいます。

他方でユニオンショップは労働組合への加入しないこと、または脱退すると解雇されるおそれがあるという点で真逆のものとなります。

項目 黄犬契約 ユニオンショップ
共通点 雇用の条件に関するもの
解雇される場合
  • 労働組合へ加入する
  • 労働組合を脱退しない
  • 特定の労働組合へ加入しない
  • 特定の労働組合を脱退する
    (他の労働組合へ加入したら解雇はできない)

 

 

まとめ

以上、黄犬契約について、その意味と法令の規制を解説しましたがいかがだったでしょうか。

黄犬契約は、従業員の労働組合への加入の自由等を制限するものであり、不当労働行為に該当する可能性があります。

ただし、ユニオンショップ協定については、その例外として認められています。

労働組合法は複雑なため判断が難しい場合があります。

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