不当労働行為の不利益取扱に該当する場合はどのような場合ですか?

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

弁護士の回答

弁護士入野田智也イラスト

①労働者が労働組合員であること、労働組合に加入しもしくはこれを結成しようとしたこと、もしくは労働組合の正当な行為をしたこと、②そのことの故をもって、③労働者に対する解雇その他の不利益な取扱いがなされた場合に不利益取扱の不当労働行為が成立します。

 

 

解説

不利益取扱(労組法7条1号前段)とは

解雇・パワハラのイメージ画像不当労働行為の不利益取扱は、個々の労働者に対する使用者の行為によって成立する点に特徴があります。

使用者が、労働者が組合員であることを理由として、その労働者を不利益に取り扱うようなことがあれば、組合に加入する労働者が減り、労働組合の存立、活動に悪影響が及びます。

そのような事態を防止するために、労組法は、使用者が、組合員であること等を理由として不利益に取り扱うことを禁止しているのです。

チェックリストのイラスト不利益取扱が成立するのは、

①労働者が労働組合員であること、労働組合に加入しもしくはこれを結成しようとしたこと、もしくは労働組合の正当な行為をしたこと

②そのことの故をもって

③労働者に対する解雇その他の不利益な取扱いがなされた場合です。

以下、それぞれについて説明します。

①労働者が労働組合員である場合や加入あるいは結成しようとしたこと

サラリーマンのイラスト①の「労働者が労働組合員である場合や加入あるいは結成しようとしたこと」について、ここでは、「労働組合」の範囲が問題となります。

学説の有力説では、「労働組合」とはその基本的定義(労組法2条本文)を満たすものであれば保護を受けると考えられています(西谷162頁)。

他方で、不当労働行為救済制度が労組法上の独自の制度として創設されたものであることに鑑みて、「労働組合」とは労組法2条本文だけでなく、自主性のための要件(2条但書1号、2号)をも満たすことを求める学説も有力です(菅野965頁)。

もっとも、この説に立った場合でも、自主性を満たさない団体が、自主性を満たすための活動を行った場合には、不当労働行為救済制度の基本趣旨から例外的に「労働組合」として保護されることになります。

「労働組合の正当な行為をしたこと」の部分については、まさにその組合の活動の正当性が問題となります。組合の行為の正当性の判断にあたっては、当該行為の主体、目的、態様、手続の観点から判断されます。

②故をもって

声を上げる男性のイメージイラスト不利益取扱の不当労働行為が成立するには、労働者への不利益取扱が組合所属や正当な組合活動などの「故をもって」されたことが必要とされています。

この要件は、不当労働行為成立のためには、使用者に不当労働行為の意思があることを要求するものです。

通説では、この不当労働行為の意思は、使用者の反組合的な意思ないし動機と解されており、使用者が当該労働者の組合所属等の事実を認識した上で、それとの関連において不利益な取扱いをしたことが認められれば足りると考えられています(西谷191頁)。

使用者の意思は、主観的なものなので、その立証にあたっては、労働者の組合所属等の事実、当該労働者に対する不利益取扱、そして使用者が労働組合を嫌悪していた事実が証明されれば、不当労働行為意思が一応推認され、使用者が、これらの事実の不存在か、もしくは不利益な取扱いを正当化する他の理由の存在を証明して、その推認を覆さない限りは、不当労働行為が成立すると考えられています。

③労働者に対する解雇その他の不利益な取り扱い

パワハラのイメージイラスト労組法7条1号は、「不利益な取扱い」として解雇のみを例示として挙げていますが、それ以外にいかなる不利益が含まれているのかについては規定されていません。

懲戒処分や賃金等の労働条件が明確に低下する措置が不利益な取扱いに該当することには、ほぼ異論はありません。

配転や出向、転籍等の人事異動については、場合により労働条件が向上することも考えられますが、これらの人事によって組合活動に支障が出るような場合で、使用者に反組合的意図が認められるような場合には、不利益な取扱いとして不当労働行為の成立を認める傾向にあります。

判例のイメージイラスト配転が不当労働行為に該当するかどうかで問題となった西神テトラパック事件(東京高判平11.12.22労判779号47頁)では、
「当該職場における職員制度上の建前や経済的側面のみからこれを判断すべきものではなく、当該職場における従業員の一般的認識に照らしてそれが通常不利益なものと受け止められ、それによって当該職場における組合員らの組合活動意思が萎縮し、組合活動一般に対して制約的効果が及ぶようなものであるか否かという観点から判断されるべき」
と判示されています。

 

 

不利益取扱の立証責任

解説する弁護士のイメージイラスト不利益取扱の立証責任は、労働者側にあります。したがって、①~③については、労働者により主張立証しなければなりません。

これに対して、使用者としては、不利益取扱とされている処分等について、当該処分に客観的合理的理由があり、不当労働行為意思がなかったといった反論がされることが多いです。

 

労働委員会への申立等を理由とする不利益処分の禁止(労組法7条4号)

レッドカードのイメージ画像労組法7条4号は、労働者が都道府県労働委員会・中労委に不当労働行為救済若しくは再審査の申立てをしたこと、もしくは労働委員会における調査・審問・和解勧告・争議調整に際して証拠の提示や発言をしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすることを禁止しています。

この規定は、団結権を保障するとともに、労働委員会が誤った事実に基づいて判断されることを防止するために設けられている規定です。

例えば、労働委員会の審問に際して、使用者側の出頭者の賃金はカットせず、労働者側の出頭者の賃金はカットしたような場合には、本号が適用され、不当労働行為が成立しうることになります。

 

労働者からの救済申立て

会社が不利益取扱の不当労働行為を行った場合、労働者から司法的救済、あるいは行政的救済を求められることになります。

司法的救済とは、裁判所を利用しての救済となります。一般に、労組法7条は、憲法28条を具体化する規定として私法的強行性をもつので、7条1号ないし4号に該当する法律行為は無効となり、事実行為も原則として不法行為にあたり違法になると考えられています(西谷144頁)。

例えば、組合員の解雇が不利益取扱の不当労働行為と判断された場合には、労働者としての地位を確認する訴えや賃金支払いを求める訴訟が提起される可能性があります。

行政的救済としては、労働委員会にたいする救済の申立てがあります。労働委員会は、独立の専門的行政委員会であり、都道府県労働委員会と中央労働委員会があります。

労働者から不当労働行為是正の申立てがあった場合には、それについて審査し、実際に不当労働行為が確認できる場合には、使用者に対して、原職復帰を命じたり、バックペイ(解雇期間中の得べかりし賃金相当額と年5分ないし6分の利息相当額の支払いを命じる)といった救済の命令が出されることがあります。

 

 





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