労働組合ではない集団からの団体交渉は拒否できますか?

カテゴリ: 5.団体交渉への対応方法

質問マーク労働組合ではない労働者集団から団体交渉の申入れがきました。

この団体交渉に応じない場合、労組法の団体交渉拒否になるでしょうか?

社長のイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士勝木萌イラスト

社団性のない労働者集団でも、団体交渉の当事者となり得ますが、使用者が団体交渉を拒否しても、労働者集団は不当労働行為救済制度の保護を受けることはできないと考えられます。

 

 

解説

団体交渉の当事者性

六法全書のイメージ画像団体交渉は、経済的弱者である労働者が、団結することによって、経済的強者である使用者と対等の関係に立ち、その代表者を通じて、自己の労働条件その他について交渉を行って、より有利な条件を獲得しようとするものであり、憲法28条によって保障されています。

この憲法28条は、「勤労者の」団体交渉をする権利を保障すると規定しており、団体交渉の主体を「労働組合」に限定していないことから、社団性のない労働者集団(例えば、特定の労働争議の際、使用者に対抗して組織される一時的な争議団)であっても、憲法28条の団体交渉については労働者側の当事者となりうると考えられています。

 

不当労働行為救済制度の適用対象

労組法は、使用者の団交応諾義務を具体化するために、使用者の団体交渉拒否を不当労働行為として禁止し、また、この団体交渉拒否に対する行政救済の制度を定めています(労組法7条2号、同27条以下)。

ここで、この不当労働行為救済制度が社団性のない労働者集団についても適用されるか否かについては学説上、争いがあります。

すなわち、肯定説は、争議団のような一時的な団結であっても、不当労働行為救済制度によって保護されると解します。

この説は、労組法7条2号が「労働組合」ではなく、「労働者の代表者」と規定としていることを根拠の一つにしています(西谷291頁)。

保護するイメージ画像これに対して、否定説は、不当労働行為救済制度によって保護されるのは、労働組合のみであり、社団性のない一時的な争議団は不当労働行為救済制度の保護の対象とはならないと解しています。

その根拠としては、労組法が団体交渉の成果としての労働協約の締結当事者となりうるのは労働組合であると規定していること(労組法14条)、そして、同法は、その労働協約の契約当事者となりうる労働組合について、基本的定義に加えて、自主性に関する特別の要件(下記参照)を課していることを根拠としています(労組法2条但書1号・2号)。

基本的定義とは、労組法2条本文に定める労働組合(労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体)をいいます。

【自主性に関する要件について】

解説する弁護士のイメージイラスト労組法は、労働組合に自主性を必要としており、次に該当するものを労働組合と認めていません。

①役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者や、その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの

②団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの(ただし、例外あり)。

また、不当労働行為救済制度の保護を受けるためには、労組法が規定する規約上の要件を満たし、かつ、同法に適合する組合であることを認定される必要があることを根拠としています(労組法5条)。

すなわち、労組法は、労働組合に規約を必要としており、この規約には、名称、主たる事務所の所在地等、所定の事項を含まなければならないと規定しています。

また、労組法は、労働組合が、労働委員会に証拠を提出して労組法2条及び規約上の要件に適合することを立証しなければ、この法律に規定する手続に参与する資格を有せず、かつ、この法律に規定する救済を与えられないと規定しています。

なお、否定説は、肯定説が根拠とする、労組法7条2号が「労働組合」ではなく、「労働者の代表者」と規定としていることについて、この表現は改正の際の起草過程の特殊性から生じた不正確な表現であって、正確には「雇用する労働者を代表する労働組合」と理解すべきものであると解しています(菅野841頁)。

ポイント以上のように、学説上、争いはありますが、労組法の文理からすれば、否定説が妥当であると考えます。

したがって、労働組合ではない労働者集団からの団体交渉申入れを拒否しても、当該集団は不当労働行為救済制度の保護を受けることはできないと考えられます。

 

 



  裁判では99%が有罪 WEB予約はこちら