労働組合の資格審査はどのようなものですか?
所轄の労働委員会が当該労働組合の申請を受け、申請組合が法定の要件を備えているかどうかについて審査します。
目次
労働組合資格審査とは
労働組合は、自主的に組織され、自主的に運営されるものです。
したがって、労働組合をつくっても、届け出の義務はありません。
しかし、労働組合が労組法上の手続(注1)に参与したり、使用者の不当労働行為に対して救済を申立てるためには、後述する一定の資格要件を備えていなければなりません(労組法5条1項)。
労働委員会がこの資格の有無を審査することを「労働組合の資格審査」といいます(労働委員会規則22条~27条)。
一定の資格要件
労働委員会の資格審査は、当該労働組合が次の要件を備えているかどうかについて行われます(労組法2条、同5条2項)。
自主的な労働組合であること
①労働者が主体となって自主的に組織されていること
②組合の主目的が労働条件の維持改善、経済的地位の向上にあること
③使用者の利益代表者(管理職等)の参加を認めないこと
④使用者から経理上の援助を受けないこと
⑤共済事業その他福利事業のみを目的とするものでないこと(注2)
⑥政治運動又は社会運動を主目的とするものでないこと(注2)
労働組合の規約に次のような規定が含まれていること
①労働組合の名称
②労働組合の主たる事務所の所在地
③均等取扱い:連合団体でない労働組合(単位労働組合)の場合には、組合員がその労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱いを受ける権利を有すること
④組合員資格:何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員たる資格を奪われないこと
⑤役員の選挙:単位労働組合の場合には、役員は組合員の直接無記名投票により選挙されること。連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合の場合には、役員は、傘下の単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること
⑥総会の開催:少なくとも毎年1回開催すること
⑦会計報告:すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であるとの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表されること
⑧同盟罷業の開始:同盟罷業を行うには、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票を行い、その有効投票の過半数の賛成を得ることが必要であること
⑨規約の改正:規約を改正するには、単位労働組合の場合には組合員の直接無記名投票を行い、全組合員の過半数の賛成を得ることが必要であること。
連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合の場合には、傘下の単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票によって全組合員又は全代議員の過半数の賛成を得ることが必要であること。
審査手続
資格審査を受けようとする労働組合は、管轄する労働委員会に対して、申請書等の必要書類を提出します。
事務局調査
労働委員会会長から指名を受けた事務局職員が、申請組合の事務所に出向いて事実の調査を行います。労働委員会が必要と認めた場合は、使用者からも聴き取り調査を行うことがあります。
チェック
申請組合が提出した書類及び事務局調査を基に、申請組合が労組法に適合しているかを検討します。労働委員会は、必要に応じて、申請組合に対して、規約の改正などの補正を指導することがあります。
公益委員の会議と決定
申請は、公益委員会会議に付議され、そこで申請組合が自主的な組合であるか、民主的な組合としての規約を備えているかなどの法定要件について判断されます。
申請組合が法定要件に適合している場合、適合決定を出します。この場合、労働委員会は、申請組合に対し、資格審査決定書の写し又は資格証明書(法人登記等を目的とする場合等)を交付します。適合していない場合、不適合決定を出します。要件の補正を勧告する決定が出される場合もあります。
注1:労組法の手続に参与するとは、法人登記の手続、労働協約の地域的拡張の申立ての手続、労働委員会の委員の推薦手続、不当労働行為救済申立ての手続をいいます。
注2:⑤と⑥については、②の要件を満たせば当然認められることから、独立の要件ではないと考えられます。

その他の関連Q&A
-
ユニオン(労働組合)とは?弁護士がわかりやすく解説
-
労働組合とは?弁護士が特徴をわかりやすく解説
-
労働者はユニオンへ自由に加入・脱退できるのですか?
-
労組法上の労働組合ではない合同労組からの団体交渉は拒否してもいいでしょうか?
-
労働組合の資格審査はどのようなものですか?
-
1
ユニオン・合同労組とは? -
2
不当労働行為とは? -
3
労働委員会の手続等 -
4
組合活動の妥当性 -
5
団体交渉への対応方法 -
6
労働協約とは? -
7
争議行為への対応 -
8
紛争の解決制度