ユニオン(労働組合)とは?弁護士がわかりやすく解説
合同労組とは、企業別組合を組織しにくい中小企業労働者が一定地域ごとに個人加盟原則によって加盟できる労働組合をいいます。
ユニオンは合同労組の一種です。
なぜユニオンが存在する?
昨今、個人でも加入できる労働組合(個人加盟型労働組合)の活動が活発化しています。
この背景には、中小企業においては、使用者側の権力が強く、企業別組合が組織されていないことが多いことがあげられます。
企業別組合とは、特定の企業または事業所に働く労働者を職種の別なく組織した労働組合をいいます。
日本では大・中堅企業において正社員が終身雇用制のもとで利益共同体となることを基盤として成立しており、日本で労働組合というと、この企業別組合をイメージされる方が多いと思われます。
しかし、日本の労働者の大半は、この企業別労働組合に加入していません。
すなわち、厚生労働省の労働組合基礎調査によると、平成27年6月30日現在における労働組合員数は988万2000人となっています。
これは、雇用者数合計の5152万人に対して、17.4%にしかすぎません(この雇用者数に占める労働組合員数の割合を推定組織率といいます。)。
したがって、日本の労働者のうち、労働組合に加入しているのは、5人のうち1人にも満たないこととなります。
また、この推定組織率は、企業規模で全く異なります。
すなわち、これを企業規模別にみると、1000人以上規模が545万3000人で、推定組織率は45.7%です。したがって、大企業では、約半分近くが労働組合に加入していることとなります。
しかし、100から999人規模では、177万2000人で、推定組織率は12.2%となります。これが、99人以下の企業では、23万人で、推定組織率は0.9%以下と極端に低くなってしまいます。
このように、中小企業に企業別組合がないため、労働者が解雇、ハラスメント、賃金未払いなどの深刻な労働問題に直面したとき、問題解決を求めて会社外の労働組合に加入する傾向にあります。
聞いたこともない名前の労働組合からある日突然、団体交渉の申入れを受ける、ということは決して珍しくありません。
また、大企業であっても、バブル崩壊やリーマン・ショックによる景気の低迷により、リストラの対象が企業別組合では非組合員とされることの多い管理職に及ぶようになると、解雇撤回等を求めて会社外の労働組合に加入することがあります。
このような背景から、現在、個人でも加入できる労働組合の勢力が強まっているのです。
合同労組・ユニオンの特徴
このような、企業別組合が組織されていない中小企業の労働者や企業別組合から排除された労働者などを一定地域ごとに組織している労働組合を合同労組といいます。
現在、次々に新しい合同労組が誕生しており、組合の規模や態様は多様であり、産業別組合、職種別組合、一般労働組合の形態があります。
合同労組には、「◯◯ユニオン」などと称する労働組合が多く、その活動が目立つようになっていますが、これも合同労組の一種です。そのため、本書においては、合同労組のことを、「ユニオン」「労働組合」と基本的には区別することなく表記しています。
なお、合同労組のことを英語でgeneral union(ジェネラル・ユニオン)といい、ユニオンはこれを省略したものです。
合同労組(ユニオン)の性格は、加盟するナショナル・センター(労働組合の全国中央組織のことで、日本労働組合総連合会などがあります)の有無や相違、運動方針、組織形態によって様々ですが、概ね以下のような特徴があげられます。
一定の地域を活動の対象としている
- 中小企業の労働者の加入が多い
- 1人でも加入できる
- 労働者であれば雇用形態に関係なく加入できる
- 労働条件の改善というよりは、組合員の解雇や未払賃金などの個別的な労働紛争を団体交渉の主要な活動とする
合同労組(ユニオン)との団体交渉の傾向
合同労組(ユニオン)が相手となる団体交渉は、企業別組合と比較して、紛争の程度が激しくなる傾向にあります。
例えば、団体交渉の席上で、組合員が「人でなし」「ぼんくら」などの野次や罵声を発することがよく見受けられます。
また、場合によっては、数十人もの組合員が参加し、団体交渉の席が騒然としたりするなど、エスカレートすることもあります。
そのため、団体交渉に慣れていない会社の担当者や経営者は、萎縮してしまい、交渉どころではなくなることがあります。
さらに、合同労組(ユニオン)は、会社が組合側の要求に応じない場合、会社内やその周辺でビラ貼り、ビラ配布、集会を行うことがよくあります。
合同労組(ユニオン)の中には、会社に要求を応じさせるために、会社の取引先や社長の自宅付近等で街宣活動を行う好戦的な組合も存在します。
会社の中には、このような好戦的な合同労組(ユニオン)を相手とすることに疲れ果て、本来であれば応じる必要などない組合側の要求に応じてしまうことがあります。

労働組合とユニオンとの違いは?
労働組合とは、労組法上、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいいます(労働組合法第2条)。
ユニオンは、労働組合の一種であり、ユニオンのことを労働組合と呼んでも間違いではありません。
上記のとおり、ユニオンは、基本的には「誰でも入れる労働組合」であり、企業別の労働組合とは異なるため、これと区別するために、通常は合同労組やユニオンなどと呼ばれています。
労働組合について、詳しくはこちらのページを御覧ください。
ユニオンから団体交渉を申し込まれたら?
ユニオンとの団体交渉においては、ユニオン側から労働条件についての強い要求が予想されます。
企業は、不当な内容で妥結しないように冷静に対応する必要があります。
団体交渉の問題点や対策については、こちらのページに詳しく解説しています。ぜひ御覧ください。

まとめ
以上、合同労組・ユニオンについて、詳しく説明しましたがいかがだったでしょうか?
ユニオンとの団体交渉は、初期対応が極めて重要です。
デイライト法律事務所には、労働問題に注力する弁護士や社労士のみで構成される労働事件チームがあり、ユニオン相手に企業が不利益を被らないようサポートします。
団体交渉については、手遅れになる前に、当事務所までまずはご相談ください。
ご相談の流れはこちらからどうぞ。


弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士
所属 / 福岡県弁護士会
保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者
専門領域 / 法人分野:労務問題、外国人雇用トラブル、景品表示法問題 注力業種:小売業関連 個人分野:交通事故問題
実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。労働問題を中心に、多くの企業の顧問弁護士としてビジネスのサポートを行っている。労働問題以外には、商標や景表法をめぐる問題や顧客のクレーム対応に積極的に取り組んでいる。
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