争議行為をした従業員を秩序違反で懲戒処分にできますか?


質問マーク争議行為に関わった従業員に対し、秩序違反を理由に処分を科したいと考えています。

懲戒処分を考えていますが、可能でしょうか?

パワハラのイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士入野田智也イラスト

正当性の認められる争議行為について懲戒処分を科すことはできません。

正当性が認められない場合は懲戒処分を科すことはできますが、その場合でも、行為に比して重い懲戒処分を科すことはできません。

 

 

解説

争議行為と懲戒処分

規則などのイメージ画像争議行為が正当性を有するとされた場合には、民事免責の効果により、違法性が阻却されますので、使用者は就業規則に基づいて懲戒処分を科すことはできません。

仮に、正当性があるにもかかわらず懲戒処分を科してしまった場合には、不当労働行為(労組法7条1号)に該当します。(民事免責について、詳しくはQ&A「争議行為とは何ですか?」をごらんください。)

他方、争議行為に正当性が認められない場合、ストライキは労務の不提供で債務不履行になりますし、ピケッティングは建造物侵入や使用者の職場環境の秩序を乱すことになります。

こうした場合に、就業規則に基づいて懲戒処分を科すことができるのかが問題となります。(ピケッティングについて、詳しくはQ&A「ピケッティングとは何ですか?」をごらんください。)

この点、違法な争議行為について個人責任を否定する見解からすれば、責任を負うべきは労働組合という団体であって、個々の労働者が責任を負うことはないという結論が導かれます。

また、就業規則に基づく懲戒処分は平常の労働関係を前提としており、争議行為時の労働関係は決して平常な状態ではないことから、懲戒処分を科すことは例外的な場合に限られるといった見解もあります(西谷446頁)。

解説する弁護士のイラストしかしながら、裁判所は争議行為は団体の行為であり、個人の行為でもあるという見解のもと、違法な争議行為に懲戒処分を科すこと自体はできると考えています。(こちらQ&A「ユニオンにストライキの損害賠償請求はできますか?」も合わせてごらんください。)

 

懲戒処分をめぐる裁判例

【参考裁判例】全逓東北地本事件 最三小判昭53年7月18日(民集32巻5号1030頁)

郵便局のイメージ写真この事例では、当時公務員であった郵便局員が複数の郵便局で賃上げを目的としてストライキを行い、そのストライキを主導、指揮した全逓東北地方本部の執行委員長が懲戒免職とされており、同処分の相当性が問題となった。
最高裁は、以下のとおり判断している。
「本件についてみると、坂田局、横手局及び仙台局におけるストライキは、その主目的が賃上げ等の経済的要求にあつたとしても、公共性の強い郵便局の職場全体で大規模に、しかも当局の再三の警告を無視して行われたものであり、それによつて生じた業務阻害の結果も、軽視することができない。また、その他の行為のうち特に仙台郵便局において多数組合員が集団交渉を要求して庁舎内に立ち入り集団示威行進や坐込みをした行為は、右集団交渉の要求自体公労法(公共企業体等労働関係法)の定める団体交渉の手続を無視した不当なものであるばかりでなく、その態様が著しく粗暴で喧騒にわたつており、それによつて業務運営その他に及ぼした影響も深刻なものであつたことが推認されるのであるから、組合における上告人の地位にかんがみれば、これらの行為に関する上告人の責任は重大であるといわなければならない。」
その上で、この執行委員長が過去にも7回停職処分を受けていたことなどを理由に懲戒免職処分は裁量の範囲を逸脱しておらず、相当な処分であると結論づけています。

 

【参考裁判例】大和交通事件 奈良地判平12年11月15日(労判800号31頁)

タクシーのイメージ画像この事案では、賃金改善を理由にストライキに留まらず、非組合員の業務を阻害するピケッティングを行った組合員が懲戒解雇されたもので、懲戒解雇の有効性が問題となった。
「懲戒解雇は懲戒処分の中でも、労働者を企業の外に放逐する最終的な処分であるから、その適用にあたっては、当該労働者を懲戒解雇しなければならない程度の重大な企業秩序に違反する行為があった場合に限るよう、慎重に検討しなければならないところ、本件ピケが違法であることは事実であるが、その程度はピケにあたり平和的説得を超えたというものであり、暴力行為を伴うものではなく、また、近鉄奈良駅前やJR奈良駅前での別組合員に対する業務妨害についてEが指示したと認めることができないことは前述のとおりであり、また本件ピケによる会社の財産的損害も前記のとおり16万0043円以上の損害を与えたとは認められないこと、本件タクシーパレードも会社に実害を与えていないこと、・・・等の事情に照らせば、Eに対する本件懲戒解雇処分は実体的にも相当性を欠いているものと言わざるをえない。」
このように述べて、Eに対する懲戒解雇処分は無効であると判断している。

ポイントしたがって、懲戒処分が行える場合でも、具体的にどのような処分が行えるかどうかは、違法とされた争議行為の内容や与えた影響の程度を踏まえて決定しなければなりません。

 

 

7-争議行為への対応

その他の関連Q&A



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