労働協約に人事同意条項がある場合、ユニオンの合意がなければ解雇できないのでしょうか?


弁護士の回答

弁護士小原隆寛イラスト

原則としてユニオン(合同労組)の同意なく解雇できません。

もっとも、解雇を根拠づける重大な事由が客観的に存在するのに労働組合が同意拒否の態度に固執するという場合には、同意権の濫用として、解雇できることがあります。

 

 

解説

人事同意・協議条項の意義

人事同意に関する統計人事同意・協議条項とは、使用者が解雇や配転・出向を行うに際し、労働組合の同意や労働組合との協議を必要とする旨定める条項のことです(西谷350頁)。

これの条項は、戦後に労働組合の力が相対的に強かった時代に広く普及した制度です。

その後、労働組合と使用者の力関係には変化がみられますが、現在でも多くの労働協約の中に残っています。

平成23年労働協約等実態調査によると、一般組合員の解雇に対してなんらかの関与を行っている労働組合は73%にのぼり、その内訳は、同意11.2%、協議24.9%、意見聴取9.6%、事前通知15.7%、事後通知7.0%等とのことです。一般組合員の配転については65.1%で、内訳は、同意5.0%、協議9.4%、意見聴取6.0%、事前通知23.5%、事後通知16.5%等とのことです。

なお、組合役員の人事に関しては、全体として関与する組合の比率が高くなりますし、関与の程度も強くなる傾向がみられます。

 

人事同意・協議条項の法的性格と違反の効果

辞令のイメージ画像では、人事同意・協議条項があるにもかかわらず、それに違反してなされた解雇、配転等の人事の法的効力はどうなるのでしょうか。

この点について、人事同意・協議条項につき、規範的効力を認めるか、債務的効力しか生じないと捉えるかで見解が分かれています。

有力な学説は、人事同意・協議条項の趣旨は、労働組合自体の権利・利益の実現が主眼ではなく、組合員の利益擁護にある点に着目し、個別契約上の権利・義務に直接関係するものとして規範的効力を認めるべきとします(西谷351頁)。

しかし、人事同意・協議条項は、解雇その他の人事を手続的に制約するもので、同意・協議の主体は労働組合ですから、実体的な労働条件基準を設定する一般の規範的部分とは異なった性格をもっています。

そのため、当該条項につき、規範的効力は否定し、債務的効力のみを認める見解が妥当でしょう(菅野884頁)。

解説する弁護士のイラストこのように解したとしても、当該条項に違反してなされた解雇・配転等は、適正手続及び自然的正義に反するなどの論理により、権利濫用として無効になると解し得るので、不都合はありません。

裁判例も、日本製鉄事件(福岡地小倉支判昭25.5.16労民1巻3号301頁)で同様に解しています。

 

人事同意・協議条項の運用

裁判所のイメージ画像解雇、配転等の措置が、人事同意・協議条項に違反したといえるか否かについては、当該条項の客観的解釈を前提として、具体的状況において実質的に条項の違反があったかどうかにより判断されます。

したがって、解雇についての同意条項が存在する場合には、当該組合の同意が要求されます。

では、解雇を根拠づける重大な事由が存在するのに、労働組合が同意条項を盾にとり、解雇に同意しないという場合に、使用者がとりうる措置はないのでしょうか。

この点については、使用者は、労働組合の同意権濫用を主張し、当該組合員を解雇できると考えられています。

同意権濫用という法律構成をとった裁判例としては、化学工業日報社事件(東京地判昭51.2.13判時812号108頁)、大阪畜産加工事件(大阪地決昭59.10.5労経速1203号3頁)等があります。

【参考裁判例】化学工業日報社事件 東京地判昭51.2.13(判時812号108頁)

判例のイメージイラスト組合が本件配転に反対していたのは、何ら合理的な理由に基づくものではないというべきであり、このことは、組合の本件配転に対する同意権の濫用であるといわなければならない。従って、本件配転が組合の同意なくしてなされても何らその効力には影響を及ぼさないものといわなければならない。

 

 

6-労働協約とは

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