ロックアウトとは?【弁護士が解説】

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

『労働組合のストライキに対抗手段はありませんか?』

『従業員に対して自宅待機を命じることはできませんか?』

『ロックアウトを行ったら賃金を支払うべきですか?』

デイライト法律事務所の労働事件チームには、このような労働組合とのトラブルに関するご相談が多く寄せられています。

ロックアウトの適法性と注意点について、労働事件に精通した弁護士が解説しますので、ご参考にされてください。

 

 

 

ロックアウトとは?

拒否のイメージイラストロックアウトとは、使用者が争議行為の相手方である労働者に対して、労務の受領を集団的に拒絶し、又は事業場から集団的に締め出す行為をいいます。

使用者がロックアウトを行う目的は、労務提供を拒否することで労働者に対する賃金の支払を免れることにあります。

そこで、具体的にどのような場合に、ロックアウトが正当な行為とされ、賃金支払義務を免れるかについて、学説、裁判例を通じて議論されてきました。

 

 

ロックアウトに関する裁判例

この点、丸島水門事件において、最高裁判所は以下のように述べて、一般的な基準を明らかにしました(最三小判昭50年4月25日民集29巻4号481頁)。

判例 丸島水門事件(最三小判昭50年4月25日民集29巻4号481頁)

「個々の具体的な労働争議の場において、労働者側の争議行為によりかえつて労使間の勢力の均衡が破れ、使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、衡平の原則に照らし、使用者側においてこのような圧力を阻止し、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められるかぎりにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして是認されると解すべきである。
労働者の提供する労務の受領を集団的に拒否するロックアウト(作業所閉鎖)は使用者の争議行為の一態様として行われるものであるから、それが正当な争議行為として是認されるかどうか、換言すれば、使用者が一般市民法による制約から離れて右のような労務の受領拒否をすることができるかどうかも、右に述べたところに従い、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるかどうかによってこれを決すべく、このような相当性を認めうる場合には、使用者は正当な争議行為をしたものとして、右ロックアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務をまぬがれるものといわなければならない。」

この判例の立場からすれば、労働者による争議行為がいまだ行われていない段階で行うロックアウト(先制的ロックアウト)は許されないことになります。

また、防衛的な手段としてロックアウトが認められるかどうかは、以下の考慮要素が挙げられています。

ロックアウトが認められる条件
  1. 労使間の交渉態度
  2. 経過
  3. 組合側の争議行為の態様
  4. それによって使用者が受ける打撃の程度

ロックアウトが認められたケース

正当性が認められたロックアウトとしては、以下のような裁判例があります。

判例 安威川生コンクリート工業事件(最三小判平18年4月18日民集60巻4号1548頁)

この事件では、労働者側が時限ストライキを行い、使用者がその日に割り当てられた受注をこなすことができないとして、出荷を断念した直後にストライキを解除するという行動を6回繰り返したことに対して、使用者がロックアウトを行ったというものでした。


最高裁は、労働者が提供した労務が、ストライキにより就労しなかった時間に対する減額をした賃金に到底見合わないものであり、使用者が労働者の時限ストにより資金繰りに著しく窮し、取引先の信用も損なったとして、労働者の行った争議行為の与えた影響が甚大であったことを理由に、使用者側の対抗防衛措置としてのロックアウトを正当化しています。

 

ロックアウトの注意点

注意ロックアウトは、上記のように、認められる要件が厳格であり、よほどの事情がないと違法となる可能性があります。

また、ロックアウトが認められるようなケースは、労働組合の争議行為によって、会社に大きな打撃が生じていることが想定されます。

そのため、会社としては、ダメージを未然に防止するために、労働組合の争議行為を回避する方向に持っていくべきです。

 

 

争議行為への対応のポイント

ポイント労働組合の争議行為を回避するための一番のポイントは、労働組合との紛争を早期に解決することです。

労働組合の要求事項はケース・バイ・ケースですが、争議行為にまで発展するということは、団体交渉がうまくまとまらず、平行線をたどっている状態のことが多いです。

そのため、団体交渉に弁護士に同席してもらい、仲介役となってもらうことを検討しても良いでしょう。

また、労働組合の要求が法外な内容で、到底応じられるようなものではない場合、法的手段を検討する必要もあります。

争議活動への対応方法については、こちらのページに詳しく解説しております。ぜひご覧ください。

 

 

ロックアウトのまとめ

以上、ロックアウトの意味、要件、裁判例、注意点等ついて、詳しく説明しましたがいかがだったでしょうか?

労働組合の争議行動は、企業への影響が大きいため、早期解決が極めて重要です。

また、ロックアウトは、要件が厳格なため、正当性が認められない場合があります。

さらに、根本的な解決のためには、労働組合との紛争事態を早期に解決すべきです。

そのため、労働組合との団体交渉の対応については、労働問題に精通した専門家に相談し、助言を受けると良いでしょう。

デイライト法律事務所は、労働問題に注力する弁護士や社労士のみで構成される労働事件チームがあり、労働組合相手に企業が不利益を被らないようサポートします。

労働組合との団体交渉への同席サポートなども行っております。

労働組合の対応については、手遅れになる前に、当事務所までまずはご相談ください。

ご相談の流れはこちらから。

合わせて読みたい
ご相談の流れ

 

 





争議行為についてのよくあるQ&A

その他の関連Q&A



  

0120-783-645
365日24時間電話予約受付(フリーダイヤル)

WEB予約はこちら