組合集会に会社の食堂や応接室を使うことを拒否できますか?

執筆者
弁護士 竹下龍之介

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

保有資格 / 弁護士

質問マーク労働組合の集会に会社の食堂を利用したいという申し出がありましたが、承諾しなければなりませんか?

また、会社の応接室を利用したいという申し出だった場合にはどうでしょうか?

食堂のイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士橋本誠太郎イラスト

いずれの場合も、拒否し得ます。

特に、後者の場合には、拒否できることに争いはないでしょう。

 

 

解説

判例の考え方

裁判官のイラスト労働組合は、集会のために食堂等を使用者の許可無く利用できるのでしょうか?

この点、判例は、原則として、使用者の許諾がないかぎり労働組合は企業施設を利用し得ないと考えています。

この帰結として、企業施設を利用した組合集会についても、使用者の許諾がない限り、労働組合は企業施設を利用し得ないことになります。

 

学説

もっとも、このような最高裁の考え方には、批判も多いところです。

集会所の利用は、ビラ貼り(詳しくはQ&A「労働者が無許可でビラ配布をした場合就業規則違反にできますか?」をごらんください)と異なり、企業施設そのものに汚染その他の影響を及ぼすおそれがないためです。

学説では、専用施設と共用施設を分けたうえで、前者の利用には使用者の許諾が必要とするものの、後者の利用には使用者の許諾は不要とする見解が有力です(西谷253頁)。

書籍の写真すなわち、会社の応接室、役員室等の使用者による専用が予定されており、そこにおける集会が業務に影響を及ぼしうる施設(専用施設)については、使用者の特別の許諾なしに組合がその活動に利用することは許されません。

しかしながら、食堂や休憩室など、従業員に広く開放されている施設(共用施設)においては、労働組合は、一般従業員の利用を妨害・排除しないかぎり、基本的には自由に利用できると解されるべきとします。

この立場からは、共用施設においては、許可制が採用されている場合においても、運用において届出制に等しいものとして運用されるのが相当ということになります。意図的な不許可は、原則として支配介入の不当労働行為にあたると考えられます。

 

裁判例

判例のイメージイラスト集会のための食堂使用の拒否等が不当労働行為にあたらないとした判例として、池上通信機事件(最三小判昭63.7.19労判527号5頁)があります。

もっとも、総合花巻病院事件(最一小判昭60.5.23労判459号84頁)は、組合活動のための講堂、地下手術室等の施設の利用を拒否したことを不当労働行為とした原判決を維持しているため、注意が必要です。

なお、池上通信機事件において、多数意見は、特に理由を示すことなく原審の判断を正当と肯定しましたが、伊藤正己裁判官は補足意見を書いています。当該補足意見において、伊藤裁判官は、使用者の施設管理権に歯止めをかけるような内容に踏み込んでいるため、ご紹介いたします。

【参考裁判例】池上通信機事件 最三小判昭63.7.19(労判527号5頁)伊藤正己裁判官補足意見

食堂の画像しかしながら、労使間に実際に紛争が生じるのは、右のような使用者の許諾ないし労使間の合意が存在しない場合であろうし、現に本件においても、被上告人(使用者)が本件食堂の利用を許諾しなかったため、労使間に紛争が発生しているのである。
このような場合においても、労働組合又はその組合員が当該施設を利用して行う組合活動が常に正当性がないということはできず、使用者がこれらの者に対し当該施設の利用を許諾しないことが権利の濫用と認められるような特段の事情があるときはこれを正当なものというべきである。
そして、右の特段の事情があるかどうかについては、硬直した態度で判断するのではなく、当該施設の利用に関する合意を形成するための労使の努力の有無、程度が勘案されなければならないことはもちろんであるが、さらに、いわゆる企業内組合にあっては当該企業の物的施設を利用する必要性が大きい実情を加味し、労働組合側の当該施設を利用する目的(とくにその必要性、代替性、緊急性)、利用の時間、方法、利用者の範囲、労働組合によって当該施設が利用された場合における使用者側の業務上の支障の有無、程度等諸般の事情を総合考慮して判断されるべきものであると考える。

 

 





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