派遣社員がユニオンに加入して、団体交渉を申し入れてきました。どう対応したらいいですか?


質問マーク直接契約関係がない派遣社員がユニオン(合同労組)に加入して、団体交渉を申し入れてきました。

団体交渉を拒否した場合に、不当労働行為に該当する可能性はありますか?

社長のイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士牟田口裕史イラスト

雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる事項について、団体交渉を申し入れられた場合には、不当労働行為が成立する場合があります。

 

 

解説

労働組合法7条の「使用者」

社長のイメージ画像(1)労組法が不当労働行為を禁止しているのは、労働者の団結権を保護し、正常な労使関係を確立させるためです。

このような不当労働行為禁止の趣旨から、実務や学説においては、労働契約の当事者ではなくても、労働関係に対して現実に強い影響力・支配力をもつ者は不当労働行為法上の責任を負うべきであると考えられています。

このような考え方を前提として、有力な学説では、
「使用者」とは、「労働契約関係ないしはそれに隣接ないし近似する関係を基盤として成立する団体的労使関係上の一方当事者」(菅野955頁)と定義されたり、「労働関係に対して、不当労働行為法の適用を必要とするほどの実質的な支配力ないし影響力を及ぼす地位にある者」(西谷150頁)
と定義されています。

(2)では、派遣社員との関係で受入企業は「使用者」に該当すると言えるでしょうか。

間接雇用(構内請負や派遣労働)の三面関係で受入企業が「使用者」に該当するか問題となった裁判例をご紹介します。

【参考裁判例】朝日放送事件 最三小判平7.2.28(民集49巻2号559頁)

事案の概要

報道のイメージ画像X社は、テレビの放送事業等を営む会社であり、番組制作業務のためにA・B・C社と請負契約を締結し、A・B・C社の従業員を派遣させ、継続的に業務の提供を受けていた。
番組制作に当たって、X社は、毎月、1ヶ月間の番組制作の順序を示す編成日程表を作成してA・B・C社に交付し、右編成日程表には、日別に、制作番組名、作業時間(開始・終了時刻)、作業場所等が記載されていた。
A・B・C社は、右編成日程表に基づいて、1週間から10日ごとに番組制作連絡書を作成し、これにより誰をどの番組制作業務に従事させるかを決定することとしていたが、実際には、X社の番組制作業務に派遣される従業員はほぼ同一の者に固定されていた。
A・B・C社の従業員は、その担当する番組制作業務につき、右編成日程表に従うほか、X社が作成交付する台本及び制作進行表による作業内容、作業手順等の指示に従い、X社から支給ないし貸与される器材等を使用し、X社の作業秩序に組み込まれて、X社の従業員と共に番組制作業務に従事していた。
A・B・C社の従業員の業務の遂行に当たっては、実際の作業の進行はすべてX社の従業員であるディレクターの指揮監督の下に行われ、ディレクターは、作業時間帯を変更したり予定時間を超えて作業をしたりする必要がある場合には、その判断でA・B・C社の従業員に指示をし、どの段階でどの程度の休憩時間を取るかについても、作業の進展状況に応じその判断で右従業員に指示をするなどしていた。
A・B・C社の従業員のX社における勤務の結果は当該従業員の申告により出勤簿に記載され、A・B・C社はこれに基づいて残業時間の計算をした上、毎月の賃金を支払っていた。
A・B・C社は、それぞれ独自の就業規則を持ち、3社の従業員が所属している地域労働組合Zとの間で賃上げ、団体交渉を行い、妥結した事項について労働協約を締結するなどしていた。
このような状況下で、ZはX社に対して、3社の従業員の労働条件を交渉事項として団体交渉を申し入れたが、X社は使用者でないことを理由に団体交渉を拒否した。
これについて、中労委が就労に係る諸条件について団体交渉に応じるよう命じたため、X社がその取消を求めて訴訟提起した事案である。


判旨

判例のイメージイラスト本判決は、「労働組合法7条にいう「使用者」の意義について検討するに、一般に使用者とは労働契約上の雇用主をいうものであるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である。
と判示した上で、X社は、派遣されたA・B・C社の社員との関係で労働契約上の雇用主に当たるものではないが、事実関係からすると、X社は実質的にみて、A・B・C社から派遣される従業員の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定していたのであり、右従業員の基本的な労働条件等について、雇用主であるA・B・C社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあつたものというべきであるから、その限りにおいて、労働組合法七条にいう「使用者」に当たるものと解するのが相当であると判示した。


判例の分析

分析のイメージイラスト最高裁は、直接の雇用関係がなくとも、「雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合」には、その同視できる部分については労組法7条の「使用者」に該当すると判断しました。
同視できる部分の判断にあたっては、事案の個別具体的な内容によって左右されることになります。本判例では、派遣された従業員がX社の指揮監督の下、X社の社員と共に、X社の機材を用いて業務にあたり、作業時間や休憩等の指示もX社が行っていたことから、派遣された従業員の基本的労働条件等については雇用主と同視できると判断されています。
このように、直接雇用関係がない場合でも、不当労働行為における「使用者」に該当することはあります。

 

ユニオン(合同労組)からの申入れの対応について

団体交渉を求められたとしても、「使用者」(労組法7条)に該当しない場合には、団体交渉に応ずる義務はありませんから、拒否しても差し支えありません。

もっとも、前記した朝日放送事件から分かるように、直接雇用関係がなくても、「使用者」であると判断される場合があります。したがって、派遣社員が加入したユニオン(合同労組)から団体交渉を申し入れられた際に、雇用契約関係にないからという理由で拒否してはいけません。

お断りのイメージ画像問題の派遣社員との関係で会社がいかなる決定権を持っているか、決定権を持っている事項についての団体交渉の申入れであるのかなど、具体的に検討することが求められます。

十分に検討をした上で、自社が「使用者」に該当しないと判断されるのであれば、団体交渉を拒否することも選択肢の一つですが、「使用者」に該当するかどうかは、裁判所でも判断が分かれうる難しい問題ですので、弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。

 

 

2-不当労働行為とは

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