ユニオンの活動への損害賠償請求は不当労働行為になりますか?

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

質問マーク労働組合(ユニオン)の活動に対して損害賠償請求をしたいです。

この請求は不当労働行為に該当しますか?

疑問に思う女性のイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士入野田智也イラスト

正当性が認められる組合の活動に対して、損害賠償請求をした場合には、不当労働行為が成立する場合があります。

 

 

解説

組合活動の保護

憲法28条は、団結権、団体交渉権、団体行動権を保障しており、組合の街宣活動などは、団体行動権として保障されていると考えられています。

さらに、組合の活動は、労組法による保護を受けており、刑事責任の免除(労組法1条2項)、民事責任の免除(労組法8条)が規定されています。

保護するイメージ画像また、不当労働行為制度(労組法7条)によって、正当な組合の活動である限り、使用者が不当に介入したり、不利益な取扱いを受けないよう保護されています。

もっとも、これらの保護はあくまで当該組合の活動が正当性を有する活動であった場合です。組合の活動が正当性を有しない場合には、不当労働行為に該当することもありませんし、民事・刑事上の責任も発生することになります。

 

組合の活動の正当性に関する裁判例

街宣活動のイメージ画像旭ダイヤモンド工業事件(東京地判平25.5.23労判1077号18頁)では、
「街宣活動に係るビラの内容等は、前記前提事実に照らせば、虚偽の内容を含み、あるいは、意見ないし論評の域を逸脱して、原告会社の名誉、信用を毀損し、平穏の営業活動を営む権利を侵害するものであり、かかる行為は労働組合に保障された団体交渉権及び団体行動権に属する正当な行為とはいえず、また、表現の自由として保障された範囲を逸脱するものとして保護に値しないものというべきである。」
と判示し、組合の活動の正当性を否定し、会社の損害賠償請求を認容しています。

旭ダイヤモンド工業事件は、組合が前訴において、一定の範囲内の土地における街宣活動等が禁止されたにもかかわらず、その後も街宣活動を続けたり、虚偽のビラを配布し、社長個人の自宅周辺でも活動を実施していた事案であり、裁判所は
「本来的には職場領域で解決されるべき労使紛争を特別の必要性もないのに、個人の私生活の領域に持ち込んで住居の平穏(平穏の私生活を営む権利)を侵害したものと認められ、相当性の範囲を著しく超える違法なものというべきである」
と判示し、一定範囲の街宣活動を差し止める判決を出しています。

声を上げる男性のイメージイラスト書泉事件(東地判平4.5.6労民集43巻2=3号540頁 判時1426号131頁)では、組合側は、訴訟提起が不当労働行為を実現する目的で提起されたことから、訴権の濫用にあたり、訴えの利益を欠いているとの主張がされました。

この点について、裁判所は、使用者側が組合に対して嫌悪感を抱いていたことは認められるものの、訴訟提起をすることで、組合のピケ行為によって生じた損害の賠償責任が組合やピケ行為をした組合員に発生するのか確定させることには意義があり、正当な権利行使の面があることから訴権の濫用とはいえないと判断しています。

また、以下のような事情からピケの正当性がないことを認定しています。

街宣活動のイメージイラスト「顧客に対する不買の呼びかけやビラの配付に止まらず、両店舗の出入口ドアやショウウィンドウ等にスローガン等を記載した横断幕、ステッカー、ビラを張りめぐらし、ときには出入口前に組合員が座り込んで将棋やトランプに興じる等、およそ顧客が自由に出入りして購入したい本を探せるような雰囲気ではない状況を作出したうえ、被告組合員らの説得に応ぜず敢えて店内に入ろうとする顧客に対しては、罵声を浴びせたり取り囲んで押し戻す等実力をもって入店を阻止するというものであり、これらの事情を総合すると、本件ピケストは平和的説得の範囲を超えたものであって違法であると言わざるを得ない。」

 

 





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