ユニオン活動についてのアンケートに法的問題点はありますか?
当社で、ユニオン(合同労組)での組合活動についてのアンケートを実施しようと思います。
なにか法的に問題になるようなことや注意点はあるでしょうか?

アンケートの内容が組合の内部事項で秘匿性の高い事項に及んでいたり、実施方法が強制的に実施するような方法で行われた場合には、労働組合の活動に支障をきたし、組合弱体化に結び付く可能性があるため、支配介入の不当労働行為に該当する可能性があります。
支配介入の可能性
ただ単に職員に対して、アンケートを実施すること自体は問題ありませんが、その内容が労働組合に関する事項が含まれる場合には、その実施自体によって、組合に対して何らかの影響力が及ぶ可能性があり、不当労働行為の支配介入に該当する可能性があります。
支配介入に該当するか否かは、組合結成・運営に対する干渉行為等の組合弱体化につながる行為があり、その行為について使用者に反組合的意思が必要となります(反組合的意思の要否については争いがあります)。
したがって、実施するアンケートの内容次第では、そのアンケートの実施が不当労働行為に該当する可能性があるのです。
以下で、ご紹介している大阪市(職員アンケート調査)事件では、アンケートの内容や実施方法等から不当労働行為に該当すると判断されています。
【参考命令】大阪市(職員アンケート)事件 中労委命令平26.2.15(労判1093号92頁)
事案の概要
大阪市が、市長名、交通局長名、水道局長名で所属部署の職員に対して、「労使関係に関する職員アンケート調査」としてアンケートを実施した。
質問内容は、労働組合に加入しているかどうか、組合に待遇を相談したことがあるか、ある場合には、その時間場所などを回答させるものであった。
このようなアンケート調査を実施したこと(以下「本件アンケート調査」)が、市による労組法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)であったとして、救済申立てが行われた事案である。
初審の大阪府労委は、本件アンケート調査は市による労組法第7条第3号の不当労働行為にあたると判断した。これを不服として市が再審査を申立てた事案である。
命令の概要
市は、内部告発等によって不適切な組合活動が行われている疑いがあったことなどから、市が考えるところの「労使関係の適正化」を図ることを目的として本件アンケート調査を実施したものと考えられるが、実施方法が、懲戒処分を伴う業務命令として早期回答を一方的に強制するものであり、質問内容も、組合活動全般にわたる無限定なものや組合内部の問題にわたっており、当時の労使関係に鑑みても、組合を弱体化する意図をもって実施されたものであったことなどからすれば、使用者が行う組合の実態調査としては、全体として行き過ぎた調査であったといわざるを得ない。
したがって、本件アンケート調査は、単なる情報収集を超えた組合活動に対する干渉行為にあたり、組合の組合員に動揺を与え、組合活動を萎縮させることにより、その団結を弱体化させる不相当なものであったことから、市によって行われた組合に対する労組法第7条第3号の不当労働行為であったと認めるのが相当である。
参考命令を踏まえて
参考命令では、アンケートの内容が組合の内部の事柄について質問するものであり、その実施方法についても懲戒処分を伴う業務命令として実施されていることから、アンケート調査は組合に対する不当な干渉行為で、組合を弱体化させるものであるとして支配介入の不当労働行為を認めました。
組合に関するアンケート調査が、どこまで許容されるかの線引きは定かではありませんが、質問内容が組合の内部事項で秘匿性の高い事項であったり、また、実施方法が強制的な方法になれば、支配介入の不当労働行為に該当する可能性が高くなるといえます。


弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士
所属 / 福岡県弁護士会
保有資格 / 弁護士
専門領域 / 法人分野:労務問題 個人分野:人身障害事件
実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士。労務問題に注力。企業向けに働き方改革等のセミナー講演活動を行う。「働き方改革実現の労務管理」「Q&Aユニオン・合同労組への法的対応の実務」等の書籍を執筆。
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