労働組合内の少数派の行動で懲戒処分した場合、不当労働行為に該当しますか?

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

質問マーク労働組合内の少数派の行った行動に対して懲戒処分をしました。

これは不当労働行為に該当しますか?

パワハラのイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士勝木萌イラスト少数派の組合活動が、組合の明示ないし黙示の承認を受けている場合には、その活動に対して懲戒処分をすれば不当労働行為が成立する場合があります。

 

 

解説

「労働組合の正当な行為」とは

解雇・パワハラのイメージ画像使用者が「労働組合の正当な行為」(労組法7条1号)に対して不利益な処分をした場合には、不利益取扱の不当労働行為が成立することになります。

労働組合内の少数派の行った活動に対する不利益な処分に関して、不当労働行為が成立するか否かは、当該活動が「労働組合」の活動といえるのかが問題となります。

そもそも、労働組合の活動として認められないのであれば、労組法の保護を受けることはないので、正当性の判断をするまでもなく、当該活動を理由に不利益な処分をしたとしても、不当労働行為に該当することはありません。

 

裁判例

組合員の活動が「組合の活動」として評価できるかどうかの判断基準について、統一的な基準は定まっておらず、裁判例においても事案ごとの判断がされています。

裁判例の見解のなかでは、組合の明示の意思に反しても広く認める立場や組合の明示あるいは黙示の承認がある場合に限り「組合の活動」として認める立場があります。

判例のイメージイラスト後者の立場における「黙示の承認」の判断基準についても裁判例によってまちまちですが、新規採用者への組合加入の勧誘活動は組合から授権があると認められた例(東京地判昭31.10.10労民集7巻5号895頁)、職制批判等の記事を機関誌に投稿・掲載した組合員の行為について、労働者の組織化と団結に不可欠な行為で直接又は間接に組合員の団結権擁護と地位の向上を図る目的であるとして組合行為として認めた例などがあります。

 

学説の見解

学説では、大きく3つの見解に分れています。

ポイント1つ目は、不当労働行為の救済制度の目的を「円滑な団体交渉の実現」として、団体交渉に関連する活動のみに限定する最狭義説です。

2つ目は、組合の役員選挙における独自の活動や組合の方針決定にあたっての意思表明活動等の組合の運営に資する活動に限定し、組合の方針に反する活動は含まないとする狭義説です。

3つ目は、組合の指令のある行為はもちろんのこと、指令に基づくかない組合員の自主的な活動、さらに指令違反の活動も客観的に団結活動と評価される活動は組合の活動となるという広義説です。

現在では、広義説が多数説と言われています。

 

実務上の注意点

裁判所のイメージ画像少数の組合員の活動に対する労組法上の保護の範囲は、裁判例・学説においても見解が分かれており、統一的な基準は定まっていません。しかし、裁判例においても、少なくとも黙示の承認があれば保護の対象となりますし、学説においては広義説が多数説となっています。

したがって、企業としては、少数派組合の独自の活動であったとしても、何らかの不利益処分を検討する場合には、不当労働行為に該当する可能性を十分に踏まえた上で処分すべきといえます。

 

 





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