労働審判は通常の裁判とは違うのですか?

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

労働審判は通常の裁判と何が違う?

労働審判は、原則3回以内の期日で審理される、迅速な解決を目的とした手続きです。

通常の裁判(訴訟)との大きな違いは、主に以下の3点にあります。

  • 迅速性:原則3回以内の期日で終了する(通常の裁判は平均1年以上かかる)
  • 柔軟性:話し合い(調停)による解決が優先される
  • 専門性:裁判官だけでなく、労働実務の専門家(労働審判員)が審理に加わる

会社側にとっては、申立てから第1回期日までの短い期間で、事実を調査し、反論の準備をすることが有利な解決に向けたポイントとなります。

このページでは、労働審判について、通常の裁判(訴訟)との違いや手続きの流れを弁護士が解説します。

そもそも労働審判とは

労働審判とは、会社と従業員等とのトラブルについて、原則3回以内の期日で、迅速に解決する裁判所の手続きのことです。

通常の裁判と比べて早く・柔軟に解決できるメリットがある一方で、準備期間が非常に短く(第1回期日まで約1ヶ月)、申立書や答弁書での主張が結果を大きく左右します。

そのため、会社側・従業員側どちらの立場であっても、解決金の相場や費用の目安を知り、適切な見通しを立てることが重要です。

 

 

労働審判と訴訟の違い

労働審判と訴訟の違いは次の3つです。

  1. ① 迅速性
  2. ② 柔軟性
  3. ③ 専門性

労働審判と訴訟の違い

①迅速性

1点目は、迅速性です。

労働審判は、原則3回以内の期日で審理を終結させます。

第1回目は、申立てから40日以内に指定されます(労審基則13条)。

第2、3回目については、規定はないものの、福岡地裁の運用では、第1回目から1週間ないし2週間程度の日数を置いて第2回目を入れ、第2回目から1週間程度の日程を置いて第3回目を入れます。

労働訴訟の第一審の平均審理期間が14.3か月であることと比べると、迅速な手続であるということがいえます。

労働訴訟の期間について、詳しくは以下をごらんください。

 

②柔軟性

2点目は、柔軟性です。

労働審判では、話合いによる解決が優先されています。

そのため、労働審判委員会は、当事者の言い分を確認した後、まずは調停を試みる運用がなされています。

また、調停が成立しない場合、事案の実情に即した解決を図るために相当な労働審判を言い渡すという手続です。

通常の訴訟の判決のように、原告の請求を認めるか、認めないかという一刀両断的な解決ではありません。

 

③専門性

3点目は専門性です。

労働審判は、裁判官のほかに、労働関係に関する専門的な知識を有する労働審判員が事件の審理や判断に加わります。

そのため、労働審判の手続では、裁判官である労働審判官1名のほかに、従業員側、会社側から1名ずつの労働審判員が選任され、この3名が労働審判委員会を構成し、事件の審理を担当します。

 

 

留意点

労働審判では、前述したような通常の訴訟との違いの他に、次の点に留意して行動すべきです。

 

第1回期日の重要性

通常の民事訴訟は、訴訟提起後、長い期間をかけて双方から主張・立証がなされます。

裁判官は争点整理や証拠調べを行い、少しずつ心証を形成していきます。

また、通常の民事訴訟では、被告側は第1回期日は欠席することが多くあります。

これは民事訴訟では、擬制陳述といって、第1回目は答弁書を提出さえすれば、欠席したことにならず、答弁書の陳述を擬制することが可能だからです。

また、答弁書の中身も薄く、詳細な反論や証拠の提出は後日でも構いません。

これに対して、労働審判は、迅速性が要求されるため、第1回期日に労働審判委員会は、ある程度の見通しを立てて、当事者双方に調停案を提示するのが通常です。

したがって、相手方である会社は、第1回期日において全力で反論しなければ、不利な状況に追い込まれてしまいます。

そこで、会社側は、第1回期日の前に、申立人の主張に対する認否や詳細な反論を書面で行い、かつ、会社の主張を裏付ける証拠を提出すべきです。

そのために、代理人となる弁護士と少しでも早く打ち合わせを行い、書面の準備等に取り掛かるようにしてください。

 

当事者本人の出席

通常の民事訴訟では、期日には本人尋問等を除いては代理人である弁護士しか出席しません。

しかし、労働審判では、特に第1回目については、たとえ弁護士がついていたとしても、当事者本人の出席が望ましいです。

これは、第1回期日においては、労働審判委員会から当事者に対して審尋がなされることが通常となっているからです。

当事者の言い分については、事前に書面で提出していますが、労働審判委員会は、出席した当事者から直接話しを聞いて、その場で心証を形成し、調停条項案を検討します。

そのため、会社側であれば、企業規模にもよりますが、通常は代表者に出席してもらいます。

また、当事者が出席していることがほとんどであるため、会社側としては、申立人である従業員への質問等が可能となります。

そのため、どんな質問をするかを事前に検討しておくと、労働審判を有利に進行させる可能性があります。

 

傍聴

よく会社側から人事担当者や申立人である従業員の直接の上司等、事情をよく知る関係人を同席させたいとの申入れがあります。

しかし、労働審判手続は、原則非公開の手続であり、傍聴は労働審判委員会の許可が必要です(労審法16条)。

そのため、当日、社員の方を連れて来ても、同席できない可能性があります。

弁護士の経験上、多くの地方裁判所では、関係人については、従業員側の同意があれば認めてくれますが、拒否すれば同席はできないようです。

 

訴訟への移行

労働審判で和解が成立せず、審判が言い渡されると、当事者は不服があれば2週間以内に異議を申し立てることができます(労審法21条1項)。

この場合、労働審判は効力を失い、労働審判の申立てにかかる請求は、当該労働審判の申立てがあったときに、裁判所に訴えがあったものとみなされます(労審法21条3項、22条1項)。

このように訴えの提起があったものとみなされますが、労働審判事件の記録は訴訟に引き継がれないため、当事者は改めて訴訟において主張書面や証拠を提出する必要があります。

通常の民事訴訟では、一審判決に不服がある場合、控訴すれば訴訟記録が高等裁判所に引き継がれるのと扱いが異なるので注意してください。

 

 





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