ユニオンとの団体交渉の時間帯はいつにすべきですか?

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

弁護士の回答

弁護士本村安宏イラスト

時間帯に特に決まりはありませんが、労働組合交渉担当者の参加しにくい時間帯は避けるべきです。

 

 

解説

団体交渉の時間帯の法的規制

団体交渉申入書の画像労働組合が使用者に対して団体交渉を申し入れる場合、書面で申し入れることがよくあります。この場合の書面のサンプルは(Q&A「日時を指定された団体交渉に業務上の都合で参加できない場合どうしたらいいですか?」)の団体交渉申入書を参照してください。

団体交渉申入書には団体交渉の日時が「平成〇年〇月〇日〇時から」と記載されています。このように労働組合は、事前の調整もなく、一方的に団体交渉日時を指定してくることがあります。

このような場合、使用者は、団体交渉の日時について、変更を申し出ることで日時の調整が可能です(くわしくはQ&A「日時を指定された団体交渉に業務上の都合で参加できない場合どうしたらいいですか?」をご覧ください。)。

時間のイメージ画像団体交渉の時間帯について、法律上の制限はありません。

そのため、労働組合から、組合員の就業時間中に団体交渉の開催を求められることがありますが、必ずしもこれに応ずる必要はありません。また、実際に使用者から就業時間外への変更を提示しても、労働組合側は抵抗なく受け入れる場合が多いと思います。

なお、団体交渉には、従業員である組合員自身が参加していることが多くあります。そのため、仮に、就業時間中に団体交渉を開催した場合、使用者の労働組合に対する経費援助を禁止する労組法7条3号との関係で問題があるかのように思えます。

しかし、同条は但書において、当該労働者の有給の参加も経費援助とみなさない旨規定しているので特段問題はありません。

 

不誠実交渉に該当する場合

団体交渉の時間帯について、直接的な法規制はありませんが、使用者が労働者側担当者の参加しにくい時間帯での開催に固執する場合、不当労働行為となる可能性があります。

例えば、使用者である大学が労働組合からの団体交渉申入れに対して、開催時間を午後0時から午後1時の昼休みの時間帯に限定した事案について、労働委員会は、不誠実団交に当たる不当労働行為であると判断しています(大阪大学事件:中労委平24.6.6)。

弁護士牟田口裕史画像団体交渉の時間については、通常は長くても2から3時間程度が多いようです。この点、4から5時間を限度とすべきとする学説もあります(西谷304頁)。いずれにしても、交渉があまりに長時間に及ぶと団体交渉が非効率となるのでその日は中断し、次回への持ち越しは認められると考えます。

反対に、1時間未満など、あまりにも短く一方的に団体交渉を打ち切ると不誠実交渉として不当労働行為となるでしょう。

また、次の裁判例(商大自動車教習所事件)では、使用者側の就業時間外の2時間を上限とするという対応について、合理性を有さず、不当労働行為に当たると判断しました(東京高判昭62.9.8労判508号59頁)。

【参考判例】商大自動車教習所事件(東京高判昭62.9.8労判508号59頁)

自動車教習所のイメージ画像「時間の点についてみるのに、右二(二)に判示したとおり、原告は、従来から分会及び労組との団体交渉の時間として、そのほとんどを就業時間外の2時間(交渉委員が遅出勤務の場合は午前9時頃から2時間、早出勤務の場合は午後6時頃から2時間)程度のうちに行っており、時には交渉時間が延長して、就業時間にくい込み、配車変更の措置をとらなければならないこともあったが、右延長が意図的にされたものと認めるに足りる証拠はないから、団体交渉が右のような時間内に行われるべきことは、労使間に存在した慣行ともいうべきである。
しかし、交渉の時間は、交渉進展の如何にかかわらず、常に一定の時間で打ち切ろうとすることには無理があり、合理的な延長を必要とする場合もあることは明らかであるところ、原告主張の時間に関する条件については、右のような合理的な延長を容認するものであることを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、交渉の時間を常に2時間以内と制限し、交渉の進展如何にかかわらず、これを打ち切ろうとする原告主張の条件は、合理性を有しないものというべきである。」

 

誠実交渉義務

解説する弁護士のイメージイラストもっとも、使用者は、労働組合からの団体交渉申入れがあった場合、義務的交渉事項についての申入れであれば、交渉に応じる義務があります(労組法7条2号)。

また、使用者は、単に応じるだけではなく、誠実に交渉に応じなければなりません。

そのため、団体交渉が早期に開催できるように配慮すべきであり、あまり先になりすぎないように注意しなければなりません。

 

 





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