使用者側は、どのような人が交渉担当者となりますか?

カテゴリ: 5.団体交渉への対応方法

弁護士の回答

弁護士竹下龍之介イラスト

会社代表者、個人企業における事業主等、交渉事項について決定権限を有する者が交渉担当者となる必要があります。

 

 

解説

団体交渉における使用者側の担当者

団体交渉の担当者とは、団体交渉を現実に担当する者です。

すなわち、実際に団体交渉の場に出席して交渉を担当する者であり、これには交渉権限のみを有する場合、妥結権限までを有する場合、さらに協約締結権限をも有する場合があります。

労働者側の交渉担当者については、労組法6条が委任を認めており、受任者について特に制限がないのに対し、使用者側の交渉担当者については、労働組合の団体交渉権によって制約を受けることになります。

まず、基本的に、当該交渉事項について、決定権を有する者が交渉担当者となる必要があります。

圧力のイメージ画像したがって、個人企業における事業主、会社企業における代表者(代表権を有する取締役等)であれば、通常問題はありません。

問題は、代表者以外の従業員等が交渉担当者となり得るかです。

例えば、人事部長、工場長、支店長、労務担当者等です。これについては、当該企業組織内において、その担当者に実施的な決定権限が帰属しているか否かが基本的な判断基準となります。

したがって、支店や工場などにおける交渉では、その単位の責任者(支店長や工場長)が交渉担当者になり得ます。

 

団体交渉における弁護士の同席

弁護士は、法律事務を行うことを職責としていることから、依頼者である使用者から団体交渉についての代理権を授与されていれば、交渉担当者として団体交渉に同席し、発言することが可能です。

しかし、通常弁護士は、当該企業の労使関係について熟知している立場ではありません。

弁護士橋本誠太郎画像したがって、当該弁護士が企業の労使関係について実質的な決定権を有している場合を別として、弁護士だけが出席する団体交渉は誠実な団体交渉といえず、不当労働行為となるおそれがあります。

また、仮に、不当労働行為にならないとしても、交渉事項について中身を熟知した者が参加したほうが団体交渉は円滑に進みます。

したがって、企業は、弁護士に団体交渉を依頼する場合でも、別に交渉担当者を参加させるべきです。

 

参考裁判例

解説する弁護士のイラスト前記のとおり、使用者が交渉事項について、決定権限のない者を出席させる場合、誠実交渉義務に反する不当労働行為とみなされるおそれがあります。

次の裁判例は、賃上げ及び夏季一時金問題についての団体交渉に代表取締役自らはほとんど出席せず、その応対を専務取締役に任せきりにした事例です。

【参考裁判例】大阪特殊精密工業事件(大阪地判昭55.12.14労判357号31頁)

製造工場のイメージ画像裁判所は、
「本件において原告は、株式会社に組織変更する前後において、欠損金が出たことを主たる事由として賃上げ等には一切応じられないと判断しているのであるが、右認定事実に照らすと、右判断が正当であり、他にとるべき方策がないとまで断ずることには疑問があり、また、原告は、参加人との団体交渉の場においても、参加人を十分説得し、かつ、参加人が検討し得るに足る資料の提示は勿論、具体的事由を示した説明などを十分に行わず、単に利益が上がらないとの理由のみでゼロ回答をするに終始し、また、原告が行った賃金改訂に関する具体的提案(請負制又は二段階方式)も、参加人が十分検討し得るだけの資料を開示して行ったものでなく、右認定のような提案の仕方自体からしても、これを十分検討し、団体交渉を妥結に導くために行なったものであるかさえ疑わしいものである。さらに、代表取締役後藤良雄は、参加人との団体交渉を後藤忠彦に委ね、自らはほとんど出席しないという状況にあるところ、右のような団体交渉の担当者の決定自体については一概に不当とまでいうことはできないのであるが、本件のごとく参加人の賃上げ等の要求に対し、ゼロ回答をすることが已むを得ず、あくまでもこれを固執せざるを得ない状況にあると判断する場合には、原告の最高責任者である後藤良雄自らが団体交渉の場に出席し、右回答をなさざるを得ない事情などを説明し、参加人の理解、納得を得べく努めるべきであるというべきであるし、殊に本件では、後藤忠彦は原告会社の経営を一応任かされていたとはいえ、賃上げ等の決定については、最終的には右忠彦の一存で決定することはできず、代表取締役の後藤良雄の指示を仰がなければならなかったのであるから、右交渉にはできる限り代表取締役の後藤良雄自ら出席すべきであったというべきである。」
とし、会社が誠実交渉義務に反し、労働組合との団体交渉を正当な理由がなくて拒んだものとして不当労働行為にあたると判断しています。
この事案において、裁判所は、代表取締役が団体交渉にほとんど出席せず、かつ、対応した専務取締役が具体的事由・資料を示さずゼロ回答に終始したことを総合的に考慮し、不当労働行為にあたると判断したものと考えられる。

 

 



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