請負企業の労働者が所属するユニオンの団体交渉に応じる義務はありますか?

カテゴリ: 5.団体交渉への対応方法

弁護士の回答

弁護士入野田智也イラスト

雇用主と部分的にでも同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合、使用者として団体交渉に応じる義務があります。

 

 

解説

団体交渉における使用者側の当事者性

ビジネスマンのイメージ画像労組法は、使用者が「雇用する」労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒否することを不当労働行為として禁止しています(労組法7条1号)。

「使用者」とは、一般的には、労働者との間で雇用契約の当事者となっている者をいいます。

したがって、例えば、ある企業が単に関連会社の労働条件の決定に一定の影響力をもっているということだけでは、当該企業に使用者としての地位を認めることは困難といえます。

では、質問のように、雇用契約ではなく、業務請負(委託)契約を締結している場合はどうでしょうか。

このような場合、形式上は「雇用する」使用者とはいえません。

しかし、例えば、発注企業が自己の事業場に請負(受託)企業の従業員を受け入れて業務従事させているような場合、その労務提供の実態いかんによっては、発注企業に使用者としての性格を認め得る場合があると考えられます。

労組法の「使用者」の意義について、学説にはいくつかの見解がありますが、いずれの立場でも、雇用契約の当事者のみに限定はしていません。また、裁判例も、雇用契約の当事者ではない、元請企業や派遣先企業に使用者性を認めたものもあります。

【労組法上の使用者の意義についての学説】

パワハラのイメージイラスト①支配力説

この説は、不当労働行為制度が労働関係上の諸利益を直接脅かすような形態での半組合的行為を排除または防止することがねらいであることを根拠として、労働関係上の諸利益に何らかの直接的な影響力や支配力を及ぼしうる者は労組法上の使用者とする(菅野953頁)。

②労働契約基準説

労組法上の「使用者」とは、労働契約関係ないしはそれに近似ないし隣接した関係を基盤として成立する団体的労使関係の一方的当事者を意味する(菅野954頁)。

 

構内業務請負における発注企業

パワハラのイメージイラスト業務請負(委託)契約を締結している発注企業が自己の事業場に請負(受託)企業の従業員を受け入れて業務に従事させている事案において、発注企業が請負労働者の労働組合に対して、団体交渉を行うべき地位に立つかが問題となります。

この問題について、最高裁(朝日放送事件:最三小判平7.2.28民集49巻2号559頁)は、雇用主以外の事業主であっても、その労働者の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、「使用者」にあたるとの判断基準を示しました。

この事案では、以下の判断がなされています。

判例のイメージイラスト「事業主は、雇用主から派遣される従業員が従事すべき業務の全般につき、編成日程表、台本及び制作進行表の作成を通じて、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで自ら決定していたこと、雇用主は、単に、ほぼ固定している一定の従業員のうちのだれをどの番組制作業務に従事させるかを決定していたにすぎないものであること、事業主の下に派遣される雇用主の従業員は、このようにして決定されたことに従い、事業主から支給ないし貸与される器材等を使用し、事業主の作業秩序に組み込まれて事業主の従業員と共に番組制作業務に従事していたこと、雇用主の従業員の作業の進行は、作業時間帯の変更、作業時間の延長、休憩等の点についても、すべて事業主の従業員であるディレクターの指揮監督下に置かれていた。」

最高裁は上記事実関係において、事業主は実質的にみて、雇用主から派遣される従業員の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定していたのであり、右従業員の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとして、使用者性を認めています。

委託元会社の使用者性を否定した事案

報道のイメージ画像前記の朝日放送事件は、構内業務請負の事案において、発注企業の使用者性について、一般的な判断基準を示した最高裁判決であり、この判決以降、その種の部分的使用者性については、この判断基準に従って判断を行うべきものとなっています。

他方、この判断基準に従って、使用者性が否定された事案も多くあります。

例えば、福岡大和倉庫・日本ミルクコミュニティ事件(中労委平20.7.2命令集141集1018頁)は、解雇された委託先の労働者の委託元会社に対する雇用確保等に関する団体交渉の事案です。

この事案では、委託元会社が委託先会社に対し、委託料の決定等について事実上強い影響力を有し、これにより経営面についても相当の影響力を有しており、委託先会社の労働者の解雇が委託元企業の再三の契約単価の引下げを契機としたものであるとしつつ、両社の間には資本面及び人事面の関係が認められないこと、委託先会社が自らの責任で業務を行っていたと認められること、賃金等の労働条件に関与していたとはいえないこと等から、委託先の労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していないと判示しました。

 

 



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