労働組合(ユニオン)の街宣活動|違法となる基準と対策
労働組合(ユニオン)の街宣活動は、団体行動権(憲法28条)に基づく正当な活動として一定の範囲で認められています。
しかし、その活動が名誉毀損や威力業務妨害にあたるような場合は違法と評価されます。
デイライト法律事務所は、この判断基準を踏まえたうえで、企業が違法な街宣活動から名誉・信用を守るためのサポートを行っています。
労働組合(ユニオン)との団体交渉についても、当事務所にご相談ください。
労働組合による街宣活動とは

労働組合による街宣活動とは、組合側が自らの主張や要求を外部へ訴えるために、街宣車やマイク、スピーカー、ビラ配りなどを用いて会社周辺や駅前などで行う抗議アピール活動のことです。
労働組合による街宣活動は、基本的に憲法28条や労働組合法で認められている正当な行為です。
労働組合が街宣活動を行う場合は、以下のようなケースです。
【労働組合が街宣活動を行う場合】
- 団体交渉において組合側の要求に会社が応じないとき
- 会社が団体交渉の開催に応じないとき
- 会社が組合員である従業員に対して不当な嫌がらせをしているとき
また、街宣活動は、場合によっては会社の敷地だけでなく、社長の自宅周辺や取引先に対して行われることもあります。
街宣活動が違法となる基準
上記のとおり、労働組合が行う街宣活動は、憲法28条が保障する「労働基本権(団結権・団体交渉権・団体行動権)」に基づき、一定の範囲で正当な活動として保護されています。
しかし、正当な組合活動であっても無制限に認められるわけではなく、正当性の範囲(正当な目的・態様・場所など)を超えた場合は「違法」となります。
街宣活動が違法と判断される具体的なケースについて見てみましょう。
虚偽事実や過度な誹謗中傷が含まれている場合
街宣活動で配布されるビラやスピーカーでの発言内容に、事実無根の嘘(虚偽事実)や、行き過ぎた個人への攻撃・誹謗中傷が含まれる場合、違法と判断されます。
具体的には、名誉毀損罪(刑法230条)や信用毀損罪(刑法233条)が成立する可能性があります。
また、民事上でも会社や役員の名誉を著しく傷つけたとして不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求の対象となります。
会社の敷地内への侵入や不退去がある場合
公道上ではなく、会社の敷地やビル内に無断で立ち入って街宣活動を行ったり、退去を求められたにもかかわらず居座り続けたりする行為は明確に違法です。
この場合、建造物侵入罪や不退去罪(刑法130条)に該当します。
大音量による業務妨害や人の通行妨害
会社の出入口に立ちふさがって顧客や従業員の通行を妨害したり、大音量で仕事を物理的に不可能な状態にさせたりする行為も違法となります。
このような強引な態様による活動は、威力業務妨害罪(刑法234条)に該当する可能性が高くなります。
また、各自治体が定める迷惑防止条例や騒音規制条例の上限を超える音量で街宣活動を行う場合も、条例違反として取り締まりの対象となります。
暴力行為を伴う場合
人の生命や身体を傷つけることは、組合活動として正当なものとはいえません。
そのため、街宣活動の中で、人の身体に対して暴力行為があれば、違法なものになります。
なお、暴力行為は、ケガがなかった場合は暴行罪(刑法208条)、ケガがあった場合は傷害罪(刑法204条)に該当します。
社長の自宅付近や取引先に対する街宣活動
社長個人の自宅付近での街宣活動は、裁判例でも職場での問題は職場(その領域)で解決すべきとしています。
そして、組合活動といえども私生活の領域に立ち入るべきではないとして、原則違法となると考えられています(東京高判平成17年6月29日、旭ダイヤモンド工業事件など)。
また、取引先に対して、会社の違法活動をやめさせることを働きかけるような街宣活動も、その態様が行き過ぎていることを理由に違法と判断されていることも多いです(東京地決平成8年1月11日、大沢生コン事件など)。
街宣活動に対する企業の対応
まずは当事務所にご相談ください。
当事務所は、会社や相手方組合の状況に照らして、少しでも早く紛争を終了させる取り組みを行っています。

①団体交渉への弁護士の同席
弁護士は、団体交渉の場に同席することができます。
また、団体交渉の場において、依頼者である会社に代わって法的な見解を主張する代理権を有します(※)。
※士業では、社労士も同席するケースがありますが、団体交渉の代理権が法律上認められているのは弁護士のみです。
例えば、過大な要求を繰り返す労働組合(ユニオン)に対して、専門家である弁護士から法的見解や同種裁判例を示すことで、会社側の主張に説得力をもたせ、妥当な線で交渉を妥結させる可能性があります。
団体交渉が早期に終了すれば、労働組合(ユニオン)の違法活動を阻止できます。
②労働組合(ユニオン)への警告文の送付
違法な街宣活動に対しては、まず相手方組合に弁護士名で警告文を送付するという方法が有効です。
裁判所に仮処分などの法的措置を求める方法もありますが、時間や裁判費用がかかるため、早急に活動を止めさせたい会社にとっては、警告文の送付がより早い一手になります。
警告書は、合同労組・ユニオン問題に精通した弁護士に作成してもらい、弁護士名で送付することをおすすめします。
会社が自ら作成すると、文面に問題があった場合にそれ自体が不当労働行為であると反論されることがあります。
また、弁護士名で文書を送付すると、応じない場合に労働組合(ユニオン)側が裁判を起こされるという心理的プレッシャーを感じ、対応を見直すきっかけになる可能性があります。
③裁判所への仮処分の申立て
警告文を送付しても違法な街宣活動が止まらない場合は、裁判所に仮処分を申し立てることで、法的な強制力をもって活動を中断させることができます。
警告書は、あくまで任意の差止めを求めるものであり、強制力がないため、労働組合(ユニオン)によっては警告文だけでは効果がない場合もあります。
仮処分命令が発せられると、違法な街宣活動を法的に中断させることができます。
合同労組・ユニオンの問題については、当事務所にお気軽にご相談ください。
④損害賠償の請求を検討する
街宣活動が社会通念上の相当性を超えて行われ、会社の名誉や信用が著しく害されたり、営業上の損害が生じたりした場合は、民事上の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を検討します。
過去の裁判例でも、会社や役員宅周辺で大音量の街宣活動を行ったり、過激なビラを撒いたりした労働組合に対し、損害賠償責任を認めた例が存在します。
街宣活動によって顧客離れや売上減少などの実害が生じている場合は、被った損害を客観的に立証した上で、組合や関係者個人に対して法的責任を追及していきます。
⑤刑事告訴を検討する
街宣活動の態様が悪質な場合は、民事上の対応だけでなく、警察に対する「刑事告訴(けいじこくそ)」を検討します。
刑事告訴の対象となり得る主な行為と罪名は以下のとおりです。
| 違法な行為の具体例 | 該当し得る罪名 |
|---|---|
| 会社の敷地やビル内に無断で立ち入る・居座る | 建造物侵入罪・不退去罪(刑法130条) |
| 出入口を塞ぎ通行を妨害する・大音量で仕事を妨げる | 威力業務妨害罪(刑法234条) |
| 事実無根の嘘や過度な侮辱・悪口をスピーカーやビラで広める | 名誉毀損罪(刑法230条)・信用毀損罪(刑法233条) |
民事不介入を理由に警察が初期対応に消極的な場合であっても、動画や録音などの客観的な証拠を揃えて告訴状を提出することで、刑事事件として捜査や指導が進む可能性が高まります。
労働組合による違法な街宣活動の予防策
以下では、違法な街宣活動を事前に予防する対策について解説いたします。
適切な労務管理による労使トラブルの予防
労働組合が街宣活動を行う背景には、解雇や残業代未払い、ハラスメント、不当労働行為といった社内の労務トラブルが存在することがほとんどです。
街宣活動を未然に防ぐための最も根本的な予防策は、日頃から適切な労務管理を行い、トラブルの種を芽のうちに摘み取っておくことです。
具体的には、以下のポイントについて社内体制を整えておきましょう。
- 就業規則や各種労務協定(36協定など)の適正な整備と運用
- 長時間労働の是正や残業代の適正な計算・支払い
- ハラスメント防止窓口の設置と適切な初期対応
- 解雇や退職勧奨を行う際の問題解決手続の透明化
社内でトラブルが発生した際に、従業員が「会社に相談しても無駄だ」「誠実に対応してもらえない」と感じて外部のユニオンへ駆け込むケースが多く見られます。
日頃から従業員とのコミュニケーションを密にし、社内で問題を解決できる環境を作っておくことが大切です。
社内ルールの明確化(施設管理権の強化)
万が一、労働組合が会社敷地内や建物内で街宣活動やビラ配りを行おうとした場合に、迅速に排除・対処できるよう社内ルール(施設管理権)を明確にしておきましょう。
具体的には、就業規則や施設管理規定に以下のような条項を明記しておきます。
- 許可なく社内や敷地内で集会、演説、街宣活動を行うことの禁止
- 許可なく社内や敷地内でビラや文書の配布、掲示を行うことの禁止
- 会社の許可なく立ち入る行為や、退去命令に従わない行為の禁止
あらかじめルールを明確にしておくことで、敷地内への侵入やビラ配りがあった際に「明確な施設管理権の侵害・建造物侵入」として警察への通報や法的措置が取りやすくなります。
早期の弁護士相談と団体交渉への誠実な対応
従業員から労働問題についての申入れがあった段階や、労働組合から「団体交渉申入書」が届いた初期の段階で、速やかに労働問題に強い弁護士へ相談することも重要な予防策です。
会社側が団体交渉を無断で拒否したり(不当労働行為)、横柄な態度で交渉に応じなかったりすると、組合側が態度を硬化させて「街宣活動」などの強硬手段に打って出るリスクが高まります。
初期の段階から専門家のアドバイスを受け、法律に基づいた誠実かつ適正な対応を続けることで、過激な街宣活動へ発展することを防ぐことができます。
ワンポイントアドバイス!〜団体交渉の不当な拒否はやめましょう〜
筆者の経験上、不当な団体交渉の開催の拒否は、非常に街宣活動の標的になりやすいです。
会社には団体交渉の応諾義務があるため、正当な理由のない限り、団体交渉は拒否できません。
そのため、団体交渉の拒否を行わないことが、街宣活動防止に直結します。
なお、会社には団体交渉に応じる義務がありますが、相手方の要求に必ずしも応じなければいけない義務はありません。
この点はよく勘違いされる点なので、労働組合の要求に応じるべきかは慎重に検討すべきです。
まとめ
以上で解説したとおり、労働組合の街宣活動に対しては、適切な対処によって防ぐことができる可能性があります。
また、全ての街宣活動が適法とは限らず、違法な街宣活動に対しては、会社側から積極的に動いていくべきです。
もっとも、どのように動いたら良いか、専門知識がないと難しいでしょう。
労働組合の街宣活動に対する対処法の相談先は、弁護士一択です。
デイライト法律事務所の労働事件チームは、これまで多くのユニオン対応を行った実績があります。
街宣活動対策のノウハウの蓄積もありますので、お困りの経営者の方は是非一度弊所にご相談ください。
















